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人流復活へ、歩きやすい街に 全国の自治体 中心部以外では課題も 生活圏集約 過疎化対応


人流復活へ、歩きやすい街に 全国の自治体 中心部以外では課題も 生活圏集約 過疎化対応 西九州新幹線が開業し、JR長崎駅を出発する「かもめ」=2022年
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 全都道府県の主要地点の28%で人出が新型コロナウイルス流行前を超えるなど回復傾向が進んでいるが、完全には戻っていない。自治体の担当者に今後の人流アップに向けた取り組みを尋ねると、街の歩きやすさ向上やコンパクト化を重視していることがうかがえた。一方、中心部以外の場所で活気を取り戻すための課題も浮かび上がった。
 共同通信は7月、各都道府県で一つ選んだ主要地点の市区に対し人の流れに関するアンケートを行い、全てから回答を得た。人出拡大の施策を複数回答で尋ねたところ「市街地の回遊性向上策の推進」(96%、45自治体)がトップ。2位は「国内旅行者の誘客推進」(36自治体)、3位は「訪日外国人旅行者の誘客推進」(35自治体)だった。
 長崎では2022年に西九州新幹線が開業。長崎駅直結の大型コンベンション施設「出島メッセ長崎」が完成し、今年5月には先進7カ国(G7)保健相会合が開かれるなど、駅周辺を活気づける出来事が続いた。
 長崎市の担当者は、駅から少し離れた都市機能が集中するエリアにも「にぎわいを波及させ、回遊性を向上させたい」と強調。駅と路面電車の乗り場をつなぐ通路を整備し、利便性の向上を図る。「交通インフラの整備は、コンパクトシティー化にもつながる」と説明する。
 「コンパクトシティー化の推進」(25自治体)は、長崎市を含む過半数の市区が挙げた項目だ。生活機能を中心部に集約させることで市民の住みやすさ、便利さを高める。人出がコロナ禍前とほぼ同水準まで回復した岐阜駅周辺では近年、住宅や商業施設などが入る高層ビルが4棟建った。
 岐阜市の担当者は「駅前広場や歩行者用デッキを整備し、魅力ある街づくりを官と民が連携して進めてきた」と指摘した。岐阜以外でも、多くの市区で主要駅の周りにタワーマンションが建ち、生活圏の集約が進む。
 アンケートでは、主要地点周辺の施設開業・閉鎖の動きや交通機関の変化も尋ねた。公共施設の新設や多目的広場整備などインフラ拡充を挙げる回答が多かった。半面「バス便の減少」(20自治体)、「鉄道路線廃止・ダイヤ減少」(19自治体)、「百貨店など商業施設の閉鎖」(13自治体)、「空き家・空き店舗の広がり」(9自治体)と地域社会・経済の縮小傾向を示す回答もあった。
 ニッセイ基礎研究所の吉田資主任研究員は「地方では少子高齢化が進み、交通インフラの減少で一極集中に拍車がかかった。再開発がスタートしている都市も多く、新しく住みやすい場所に人が集まっている」と分析。中心部周辺がにぎわう一方、それ以外の地域では過疎化が進む動きにどう対応するかが自治体には求められそうだ。
西九州新幹線が開業し、JR長崎駅を出発する「かもめ」=2022年