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プラごみ分解、鍵は納豆 高知大ベンチャーが新素材 「海の環境守りたい」


プラごみ分解、鍵は納豆 高知大ベンチャーが新素材 「海の環境守りたい」 新素材プラスチックを開発した高知大の芦内誠教授=8月、高知県南国市
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 高知大発のベンチャー企業がこのほど、納豆のネバネバ成分から抽出した新素材プラスチックを開発した。一般的なプラスチックに新素材を混ぜ込むと分解が早まり、海中では数百年かかると言われるペットボトルでは10年程度に短縮されるという。開発した芦内誠教授(55)は「海洋ごみの大幅削減につながる」と期待している。
 新素材の原料となるのは「ポリガンマグルタミン酸(PGA)」。納豆のネバネバ成分に含まれており、プラスチックの分解を助ける微生物を引き寄せる性質があるが、固形化して取り出すのは難しいとされてきた。
 高知大で生物材料化学の研究を続ける芦内教授は、約15年前からPGAの特性に着目。試行錯誤を重ねる中、2008年の正月、帰省した妻の実家で洗面所の歯磨き粉が目に留まった。チューブに記された化学式からヒントを得て、固形化の成功につながった。
 芦内教授は09年に特許を取得し、その後も製造方法などを改良。23年にはベンチャー企業を支援する地元のファンドの資金援助を受け、新素材の研究や販売などを手がける「PlastiFarm(プラスティファーム)」を立ち上げた。
 一般的なプラごみは海を漂流するうちに砕けて5ミリ以下のマイクロプラスチックとなり、海洋汚染につながると懸念されている。新素材は、分解に役立つ微生物を多く引き寄せるため、従来のプラスチックより短期間で分解される。また塩分濃度が低い環境では抗菌性を発揮する一方、濃度の高い海中では微生物に分解されやすくなるという特長を持ち、世界的に珍しい素材という。
 新素材には複数の企業が関心を寄せているといい、25年をめどに企業への販売を始める。芦内教授は「プラスチックが海の環境を変えてしまう可能性がある。子どもたちが遊べないような海にはしたくない」と話した。
新素材プラスチックを開発した高知大の芦内誠教授=8月、高知県南国市