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「差別」知事発言に注目 普遍的問題、国際社会に主張<沖縄の訴えの波紋―知事国連訪問>上


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

18日、スピーチ予定時間の約2時間半前に議場を訪れた玉城知事は、緊張感の漂う硬い表情で会場を確認した。会合は静かに進み、各国政府の代表やNGOが発言。玉城知事の順番が近づくと、日本メディアを中心に発言者席の近くに多くのカメラが構えられた。「スピーチするのは誰なのか」とスタッフに尋ねる人もいた。
「国土の0・6%に過ぎない沖縄に全国の米軍専用施設面積の70・3%が集中している」。玉城知事は、辺野古新基地建設が過剰負担にあえぐ沖縄の人権に関わる問題だと力説した。
玉城知事のスピーチから約20分後、日本政府代表部の塩田崇弘氏が「沖縄における米軍の駐留は、地政学的な理由と日本の安全保障上の必要性に基づいており、差別的な意図に基づくものではない」と発言。基地問題が人権に直結するとの主張を真っ向から否定した。
木原稔防衛相もスピーチ後の19日の会見で、直接の言及を避けた上で「辺野古移設が唯一の解決策だという政府の方針に基づき、これからも着実に工事を進めていきたい」と従来の政府見解を繰り返した。
一方、日本政府が繰り返さなかったことがある。2015年に翁長雄志氏がスピーチした際、日本政府は負担軽減とセットで沖縄の経済振興に注力している主張したが、「人権侵害は経済振興では軽減されない」と批判を受けた。
今回は経済振興には触れず、普天間飛行場の危険性除去の必要性を前面に押し出した。日本政府として沖縄の安全のために真摯(しんし)に取り組む姿勢を強調した格好だ。
しかし、普天間飛行場の返還は、防衛省の計画でも最短で辺野古の代替施設の運用が始まる12年後とされる。ある県関係者は「普天間の一日も早い危険性の除去と言いながら、何年必要なのか。軟弱地盤で完成するかどうかも見通せない計画を、国際社会に強弁するのはおかしい」と批判した。
玉城知事はサイドイベントで、第2次世界大戦後の強制接収で米軍基地が造られたことや、さらに日本本土で米軍基地が米統治下の沖縄に移転したことで現在の過剰な集中につながった歴史的経緯を説明。事件・事故や騒音、環境問題などさまざまな人権侵害を受けていると強調した。
「沖縄だけの問題ではない。人権や環境、民主主義といった普遍的な問題だ」
(沖田有吾)