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人権補佐官 空席に 内閣改造 「肝いり政策」のはずが…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相は13日の内閣再改造で、国際人権問題担当の首相補佐官を置かなかった。同担当の補佐官は、首相が2021年の自民党総裁選で新設を掲げ、同年11月に中谷元・元防衛相を充てて注目された経緯があるが、2年弱で空席となった。政府内からは「肝いりの政策だったのに一貫性に欠ける」と疑問の声が上がっている。
 松野博一官房長官は21日の記者会見で、中谷氏の退任に関し「補佐官は担当分野、人選、タイミングを含めて首相が必要に応じて判断する」と述べるにとどめた。中谷氏が務めていた役割は、官房副長官補の下で関係府省の取り組みを調整するとした。
 首相は総裁選で、中国・新疆ウイグル自治区の人権問題などに向き合うため、人権問題担当補佐官の新設を打ち出した。第2次内閣発足時に、中国の人権侵害を批判してきた中谷氏を起用した。人権問題に厳しく対峙(たいじ)する政権の姿勢を示す狙いがあったとされる。
 中谷氏は、企業が取引先の人権リスクを把握して対応する「人権デューデリジェンス」導入促進に向けた政府の会議設置や、国内企業の人権尊重のためのガイドライン策定を主導した。ただ人権侵害に関与した外国当局者らに制裁を科せる「日本版マグニツキー法」の制定はかなわず「目立った成果はなかった」(官邸筋)。
 政府関係者は「ガイドラインの効果の検証にも時間がかかる。2年弱で結果を出すのは無理があり、中途半端な印象だ」と指摘した。