有料

魚介も持続可能な生産に/進む陸上養殖、代替マグロも/自然への負荷 少なく


魚介も持続可能な生産に/進む陸上養殖、代替マグロも/自然への負荷 少なく 6月に開かれたサステナブルシーフードの発表会で、課題について議論する事業者ら=東京都品川区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 海洋資源の減少や、海上養殖による環境問題を背景に、自然への負荷が少ない方法で生産された「サステナブルシーフード」が注目を集めている。国内ではエビやサーモンの陸上養殖が進み、海外では代替肉ならぬ植物性原料で作った“代替マグロ”も登場。売り上げを伸ばしているという。

 「今後はクエやノドグロ、サンマの陸上養殖にも取り組んでいきたい」。6月、食品宅配のオイシックス・ラ・大地が開いたサステナブルシーフードの発表会で、魚の陸上養殖に取り組む「FRDジャパン」(本社・さいたま市)の担当者が展望を語った。
 FRDはバクテリアを使った独自のろ過システムで人工海水を循環させ、千葉県木更津市でトラウトサーモンを生産。「水質をコントロールし、どんな種類の魚も育てられる」といい、海に依存しない水産養殖の産業化を目指している。
 事業の背景にあるのは海上養殖の環境問題だ。日本が大半を輸入に頼るサーモンは餌やふんによる海洋汚染の他、いけすから脱走した個体による生態系への影響が問題視され、海上養殖を禁止する国も出ている。
 日本が9割を輸入に頼るエビも海上養殖が中心で、主な生産地の東南アジアでは養殖に伴うマングローブ林の伐採や、残餌の流出といった問題を抱える。2022年から静岡県磐田市の屋内プールでバナメイエビを養殖する関西電力は「海外輸送の際に発生する二酸化炭素(CO2)の排出も抑えられ、もっと広げる必要がある」と訴える。
 魚介の代替食品を作る米カリフォルニア州の「impact FOOD」代表のケリー・パンさんは、「過度な漁業は海洋生態系に大きな損害を与え、既に多くの魚資源が使い果たされている」と危惧。乱獲や海洋汚染による将来の食料不安の解決を目指し、大学の卒業生3人で起業した。
 パンさんらは季節や年齢などで変わるマグロの筋線維の構造から研究し、植物性タンパク質と海藻類を組み合わせることで、食感や味を近づけた代替赤身マグロを開発した。魚に含まれる水銀を含有しないメリットもあり、販路を広げているという。
 日本でも6月に紀文食品が魚の漁獲量が不安定な状況にあるとして「魚肉を使わない練り製品」を開発。大豆で練り物独特の歯ごたえを再現したといい、予約販売のみだが好評を集めた。
 オイシックス・ラ・大地でサステナブルシーフードを扱う村田靖雄さんは「エネルギーロスや排水を減らすなど陸上養殖の技術は上がっており、味もおいしい。規模が拡大すれば今後、代替品を含めた関連食品を、手軽に食べられる未来が来るのではないか」と話している。

FRDジャパンのトラウトサーモンの陸上養殖場 =千葉県木更津市

紀文が開発した、魚肉を使わないさつま揚げ

6月に開かれたサステナブルシーフードの発表会で、課題について議論する事業者ら=東京都品川区