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自閉スペクトラム症の感覚 体験/東大GがVR使い実験/抵抗感減り、配慮も


自閉スペクトラム症の感覚 体験/東大GがVR使い実験/抵抗感減り、配慮も ASDの人が感じる画面のノイズのような点々を再現した疑似体験用の画像(研究チーム提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 対人関係が苦手、こだわりが強いなどの特徴で知られる自閉スペクトラム症(ASD)の人は生まれつき脳の機能の仕方が異なる。実は視覚や聴覚、触覚でも時として異常が生じることがあることが知られている。
 例えば「暗い部屋から明るい屋外に移動すると辺り一面が真っ白に」「通過する電車を見送るときに色彩や明暗がおかしくなる」「混んだ食堂で、画面のノイズのような点々が広がる」などだ。
 辻田匡葵・東京大特任助教(発達心理学)らのグループは、こうした異常な感覚を画像や音声で模擬する仮想現実(VR)で有症者以外の人に感じてもらう実験をした。講義や座談会も同時に受けてもらった。
 参加した200人以上に実験前と直後、6週間後の3回、アンケートを実施。初対面のASDの人とカフェで話をするとしたら自分はどういう反応をするかを聞いた。
 回答したのは直後が110人、6週間後が85人。いずれも「恐怖や緊張を感じる」が明らかに減少したが、「リラックスできる」「仲良くできそう」との反応に変化はなかった。6週間後の回答で「席を離れる」といった回避行動を取る傾向が強まったが、辻田さんは「騒がしいのが苦手なので、そっとしておこうとの配慮だろう」と話す。
 チームは、企業の人事担当者や学校教員の研修への応用も考えている。

ASDの人が感じる画面のノイズのような点々を再現した疑似体験用の画像(研究チーム提供)