100年前。日本を襲った関東大震災をきっかけに、多くの悲しい事件が起こった。この作品が描くのは、その悲しい事件の一つ。福田村住人による行商人9人虐殺事件。直接的な原因は、東京から流れてきたフェイクニュース。フェイクニュースを信じ、踊らされた善良な村人たちが、「村を守る」ために罪のない人々をあやめてしまい、そしてその事実は闇に葬られた。
史実をもとにしたとはいえ、現代に作られた本作が描くこと全てが真実だとは言い切れない。ただ、日露戦争の傷が癒えない当時の日本の国民感情、貧しい地域に生きた人々の心情が生々しく、リアルに響いてくるのは確か。そしてそこに流れる空気感が、現代とそっくりだということが、制作者側の意図だというのははっきりと感じる。同じ悲劇を繰り返してはいけないという願いであり、警笛なのだろう。集団でしか生きられない人類が秘める、狂気の一面。自覚しておくべきだと思う。監督は森達也。
(桜坂劇場・下地久美子)
有料
福田村事件 桜坂劇場・あす公開 踊らされた善良な村人
![福田村事件 桜坂劇場・あす公開 踊らされた善良な村人](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2023/09/RS20221013G00674010100.jpg?resize=615%2C410&crop_strategy=smart)
この記事を書いた人
琉球新報朝刊
![Avatar photo](https://ryukyushimpo.jp/uploads/2023/09/favicon-21x21.png)