世の親たちは子供が自分を超えて成長することを望んでいる。だがしかし、父と息子の関係は複雑だ。ましてや、親子が同じ職業に就いた時には、うれしい半面、他人に感じる嫉妬や羨望(せんぼう)を素直に出すこともはばかられて、いびつさは増してくるかも。
映画の中の父と子もパリの華やかなクラシック界で活躍する指揮者。互いをけん制しあい、めったに口も利かない二人。そこへ父親にかかってき1本の電話。「スカラ座の音楽監督就任」の依頼だった同じころ、息子にも1本の電話「君への電話を間違えてお父さんにしちゃった」と。息子の大いなる苦悩が始まる。
愛も尊敬もあるから家族は葛藤する。人の感情に決着をつけるのは困難だが、本音で向き合ったとき、見えてくるものもある。ラストの迫力の演奏シーンにはこみあげてくるものがあり、スカラ座の客席で拍手を送っているような幸せな錯覚に酔いしれる。監督はブリュノ・シッシュ。
(スターシアターズ・榮慶子)
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ふたりのマエストロ シネマパレット・公開中 父と息子の複雑な関係
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琉球新報朝刊
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