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民衆の苦しみ 愛憎描く/沖縄芝居研究会/「多良間ションガネー」上演


民衆の苦しみ 愛憎描く/沖縄芝居研究会/「多良間ションガネー」上演 天久金松を見送り泣き崩れるブナガマ
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 沖縄芝居研究会(伊良波さゆき代表)は3日、時代人情歌劇「多良間ションガネー」(大宜見小太郎作)を那覇市のパレット市民劇場で上演した。うやんまー(離島に赴任した役人の世話をする現地の女性)を題材に民衆の苦しみ、愛憎を丁寧に描いた。
 多良間島のブナガマ(伊良波)は首里から赴任した天久金松(上原崇弘)のうやんまーに選ばれ、恋人カニドゥヌ(金城真次)と引き裂かれる。やがてカニドゥヌはカマドゥー(儀間佳和子)と結婚。カニドゥヌは重税の苦しさから金松に反発し、ブナガマに複雑な思いを抱く。金松が去った後、島の人々はブナガマに冷たく接する。金松はブナガマと結婚しようと再び島を訪れるが、心身が衰弱したブナガマはこの世を去っていた。
 うやんまーを題材にした芝居には、うやんまーと相手士族、その子どもらに焦点を当てた「与那国ションガネー」(石川文一作)などの名作がある。「多良間ションガネー」は民衆の感情に焦点を当て、豊かな暮らしをするうやんまーへの羨望(せんぼう)、重税で壊されていく地域の人間関係を描いている点に独自性がある。
 合間に島の人々の愉快なやり取りを挟み、民衆の明るさも表現した。音楽の選曲も良く、ブナガマと金松が別れる場面などで歌われる「多良間ションガネー」がより観客の涙を誘った。
 ほかの出演者は〓宮城実人、玉城匠、赤嶺啓子、知念亜希、嘉数道彦、宇座仁一ら。 (伊佐尚記)

別れを悲しむブナガマ(左端・伊良波さゆき)と天久金松(左から2人目・上原崇弘)。右端手前はカニドゥヌ(金城真次)、右から2人目はカマドゥー(儀間佳和子)=3日、那覇市のパレット市民劇場
天久金松を見送り泣き崩れるブナガマ