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役割分け、実動部隊を指揮 自衛隊の統合司令部 スムーズな体制移行焦点


役割分け、実動部隊を指揮 自衛隊の統合司令部 スムーズな体制移行焦点 「統合司令部」のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 防衛省は2024年度末、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」を立ち上げる。これまで統合幕僚監部(統幕)が一手に担ってきた「防衛相補佐」と実動の部隊を動かす「運用」のうち、運用の役割を担う。司令部の必要性は11年の東日本大震災を大きなきっかけに指摘されるようになり、積年の懸案だった。発足まで約1年半。スムーズな移行に向けた組織づくりが進むかどうかが焦点となりそうだ。

政治補佐

 「有事の政治補佐は極めて重たくなる」。8月31日、防衛省は統合司令部新設を盛り込んだ24年度予算概算要求を決めた。この日、制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は記者会見で強調した。

 現体制で統幕には、防衛相を軍事専門的見地から補佐する「上向き」と、防衛相の命令を受けて陸海空3自衛隊の実動部隊を運用する「下向き」の主に二つの役割がある。部隊運用を統合司令部に移すことで、統幕が防衛相補佐に専念するのが今回の狙いだ。

 吉田氏は、東日本大震災当時の折木良一統幕長が「政治補佐に、かなりの時間を割いた」と話す。防衛省では、統幕長が部隊運用に集中できなかったとの反省が根強く残る。中国の活動活発化で台湾有事が取り沙汰される情勢を背景に、昨年末の安全保障関連3文書で統合司令部創設が明記された。吉田氏は、有事に備え体制を整える必要があると危機感を訴える。

2割

 統合司令部は統幕と同様、東京・市谷の防衛省に置かれる。発足当初の要員は約240人で「総務」「情報」「作戦」「後方運用」「指揮通信運用」「法務」の6部門で構成する。統合司令官は陸海空3自衛隊トップの各幕僚長と同格だが、制服組トップを統幕長とする序列は維持する。

 統合司令部が、統幕の運用機能を円滑に引き継げるかどうかは見通せない。要員約240人のうち統幕から移るのは約50人で、全体の2割にとどまり、大半は陸海空3自衛隊から集めることになる。司令部発足後も統幕の運用部門は存続するため、業務の重複を指摘する声も内部にある。

 ある防衛省制服組は「統幕からの隊員はわずかだ。3自衛隊から運用に慣れた人材を集めなければ、うまく機能しないだろう」と漏らす。

(共同通信)