ジャニーズ事務所の性加害問題を受け、テレビ各局に所属タレントの起用方針を巡り温度差が生じている。NHKは紅白歌合戦も含む新規の出演依頼を「ゼロベース」にしたが、在京民放キー局の多くは「総合的に判断」などと含みを残す。同事務所が10月2日の記者会見で説得力のある再発防止策を示せるかどうかが今後を左右しそうだ。
「考慮すべき要素が欠落していた」。NHKの稲葉延雄会長は9月27日の定例記者会見で言葉を絞り出した。番組起用については、タレントの能力だけでなく、所属事務所の在り方も念頭に置くべきだったとの反省を口にした格好だ。
NHKは契約済みの所属タレントの起用は続けるものの、被害補償などの取り組みが十分と見なせるまで新規の出演依頼はしないという態度を鮮明にした。現状のままであれば、例年の大みそかをにぎわすジャニーズタレントが今年は不在の紅白歌合戦となる。
民放各局も同事務所が既に公表している対応策では不十分として、迅速な被害者救済などを要請。ただ新規起用の見合わせを明言するまでには至っていない。受信料で成り立つNHKと異なり、番組を資金面で支えるスポンサーの動向などを見極めているとみられる。
日本テレビの石沢顕社長は「納得できる対応を取るかが、今後の制作に大きく影響する」と発言。TBSの佐々木卓社長は「改善を要求する段階を踏んで検討」、テレビ朝日の篠塚浩社長は「企画内容ごとに判断」、フジテレビの港浩一社長は「適切に判断」などとしている。
そんな中で踏み込んだのがテレビ東京だ。石川一郎社長は、9月14日に「極めて慎重に判断」するとの方針をテレビ東京ホールディングスが示して以降、新規起用はないと説明。事実上、NHKとほぼ同様の方針を取った。
一方、同事務所が設置した再発防止特別チームから性加害問題に対する「マスメディアの沈黙」を指摘されたテレビ各局の検証も、徐々に始まっている。NHKは同月11日の報道番組「クローズアップ現代」で、紅白歌合戦の元責任者らへのインタビューなどを放送。民放各局も関係者へのヒアリングを進める。
毎日放送(大阪市)の元プロデューサー、影山貴彦・同志社女子大教授(メディア論)は「公共放送であるNHKに比べ、視聴率獲得を重視してきた民放はジャニーズ事務所への依存がより強く、『忖度(そんたく)』で、がんじがらめになっているように見える」と指摘。「(自局の)検証が不十分なまま、10月2日の会見をもって一段落したとして、以前と同じように起用し続けるべきではない」と話している。
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タレント起用 温度差 ジャニーズ性加害 TV各局 会見注目
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琉球新報朝刊
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