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自民幹部、相次ぐ減税論 年内解散に余地、野党警戒


自民幹部、相次ぐ減税論 年内解散に余地、野党警戒 経済対策を巡る政権幹部の主な発言
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田政権発足から4日で2年を迎えた。内閣支持率が低迷する中、岸田文雄首相が月内に取りまとめる経済対策をてこに、衆院解散に踏み切るとの見方は、2023年度補正予算案の臨時国会提出表明に伴い急速にしぼんだ。ただ、自民党幹部からは税収増を背景にした「減税」発言が相次ぎ、年内解散に余地を残す。野党は警戒を緩めていない。
 「物価高に苦しむ国民に、成長の成果である税収増を適切に還元する」
 9月25日、官邸。首相は経済対策策定に向けた決意を記者団に語った。「税制や社会保障負担の軽減など、あらゆる手法を動員する」とも表明。減税の可能性にあえて触れた。
 世論の関心を意識したような首相発言に、与野党の一部は「臨時国会冒頭で解散を打つのではないか」と浮足立つ。経済対策の財源を裏付ける補正予算案の臨時国会提出を明示していなかったことも拍車をかけた。
 流れが変わったのが、臨時国会の召集日が固まった9月29日。首相は予算案提出にようやく言及した。政府・与党で代表質問や予算委員会などの国会日程を確認したこともあり、冒頭解散説は一気に色あせる。
 首相周辺は「いろいろな観測が出るから火消ししておきたかった」と解説する。補正予算案の成立に集中しようとする首相の姿勢に、与党幹部の一人は「年内解散のシナリオはもう捨てたのではないか」と勘繰った。
 早期解散に懐疑的な見方は与党に少なくない。それでも自民重鎮は「まだ可能性はある」と明かす。それが「減税」を目玉とした経済対策策定前後の解散だ。
 首相が信頼を置く自民の森山裕総務会長は10月1日、北海道北見市の講演で「上振れした税収分で減税対応が取られる可能性もある」とした上で「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と語った。
 減税が解散の大義になり得るとの森山氏の発言の真意を、自民選対筋は「首相に解散のフリーハンドを与えるためだろう」と読み解く。3日には森山氏に追随するように自民幹部が減税に相次いで言及した。
 茂木敏充幹事長は「税収増をダイレクト(直接的)に減税措置などによって国民、企業に還元することもあり得る」と主張。世耕弘成参院幹事長は「税収の基本は法人税と所得税なので当然、減税の検討対象になる」と語った。
 解散に備えた準備を声高に訴える公明党の山口那津男代表も、ここにきて「解散権の判断に影響を及ぼすような発言は控えたい」と口を閉ざす。
 一方、財務省はこうした減税論に距離を置く。鈴木俊一財務相は3日の記者会見で「新型コロナウイルスや物価高騰に対して、これまでにない規模の補正予算で対応してきた。財政状況も一層厳しさを増している」とくぎを刺した。
 首相の真意はどこにあるのか。立憲民主党の岡田克也幹事長は「補正予算を成立させて解散になる可能性が高い」と分析する。その上で、結論が出ていない防衛費増額の財源に触れ「増税を問うことにもなる」とけん制した。
 国民民主党の玉木雄一郎代表は危機感を募らせる。「減税の与党と、減税に反対する野党で選挙を戦うと野党は勝てない」