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海洋安保で官民連携 政府開発戦略 中国念頭、監視強化


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が海洋の安全保障強化に向けて取りまとめる「海洋開発重点戦略」案の概要が判明した。防衛省や海上保安庁といった政府機関に加え、民間が持つ各種データを共有。海の状況を一元的に「可視化」して「海洋状況把握(MDA)」能力を向上させる。沖縄県・尖閣諸島周辺などでの中国船による領海侵入や違法操業に対する監視網を強化する狙いだ。地震・津波の早期察知や海底資源管理への活用も想定する。政府関係者が3日、明らかにした。
 重点戦略は、4月に閣議決定した今後5年の海洋政策指針「海洋基本計画」に基づき、省庁横断で優先的に取り組むべき課題をまとめる。与党の意見も踏まえ2023年度中に決定する予定だ。
 MDA能力の強化は、防衛省と海保の情報共有システムを拡充。内閣衛星情報センターの衛星情報や気象庁の波浪・海流観測といった政府内の連携に加え、民間企業にもタンカーの航行情報や衛星画像などのデータの提供を要請し、リアルタイムでの共有を目指す。
 海保は現在、地形や気象などの情報を集約して地図上で重ね合わせる「海洋状況表示システム」を運用、公開している。システムを発展させ、各種データに基づいて状況把握力を高め、領海侵入や災害が発生した場合の迅速対応につなげる。米国やフィリピンなど同盟国・友好国との情報連携も推進する。
 重点戦略案には、他に(1)国境離島の現況把握(2)日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)周辺でのレアアース(希土類)開発(3)海中を自動航行する「自律型無人探査機」の開発と利用(4)排他的経済水域(EEZ)での洋上風力発電(5)北極政策での国際連携―を掲げた。