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16/鈴木信行/同じ病気の人とつながる 


16/鈴木信行/同じ病気の人とつながる  イラスト 鈴木勇介 
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「頭髪が抜けるから、かつらを作りたいけど、どこで買えるの?」
 がんの患者会でよく耳にする相談です。
 病気になったときインターネットで検索すれば大学や製薬会社が公開しているさまざまな情報が手に入ります。患者数の多い病気なら解説本が多数あります。一方、かつらの情報はなかなか得られないものです。
 自分の病気について知りたいとき、まずはあなた自身の望む生活を確保することが大切だということを忘れないでほしいと私は考えています。
 例えば、私には二分脊椎という病気があり、下半身に大きな障害があります。この場合、足を矯正する治療をするとか歩行を助ける器具を使うという選択肢もありますが、車いすを使って生活してもいいという考え方もあると思うのです。
 私自身は、歩き方は今のままでいいと考えています。つまり、治療すること、いわゆる普通に戻すことが最善とは限らないということです。
 さて、患者数の多い病気では「患者会」という患者や家族の集まりがあります。特定の病気にかかわらず地域で病気のある方が集まる会もあれば、インターネットで交流している会もあります。私としては、このような会に複数参加してほしいと思っています。
 なぜならば、医学的な情報はインターネットや本でも手に入りますが、生活に関する情報はいまだにほとんど入手できませんし、本当に役立つ情報というのは相手と個別に話ができて初めて手に入るものだと思うからです。適当な患者会が見つからない場合は交流サイト(SNS)などを活用して、先輩患者とつながるのもよいでしょう。
 例えば、幼児期の子どもに対して、自分が病気のためにしばらく会えないことをどう説明すればいいでしょうか?
 治療で体形が変わり、一般的な洋服では合わなくなったときはどうすればいいでしょうか?
 かつらはどうやって探しますか?
 困り事は本当に人それぞれです。私たち患者が困っている問題は治療そのものについてではなく日々の生活の中でどう病気を受け入れ共存していくかということについてだと思います。
 そのような問題を先輩患者たちはいろいろと工夫して乗り越えてきており、彼らの体験はとても参考になるものです。
 そうした情報を得るには、同じ病気と向き合っている患者たちとつながり、自分の生活に適した情報を探すのがよいと私は考えています。
 (患医ねっと代表)
 (次回は18日掲載)