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アマゾン配達員 労災認定 労基署 個人事業主でも補償


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 インターネット通販大手アマゾンジャパンの商品配達を個人事業主(フリーランス)として委託され、仕事中に負傷した60代の男性が、横須賀労働基準監督署(神奈川)から労災認定されたことが4日、分かった。労働組合「東京ユニオン」が明らかにした。個人事業主は本来、労災の対象外だが、労基署は男性が指揮命令を受けて働く「労働者」に該当し、補償を受ける権利があると判断した。
 実態は雇用なのに、業務を請け負う形で働く個人事業主は「名ばかりフリーランス」などと呼ばれ、労働基準法で保護されないことが問題視されてきた。今回の認定は、アマゾンの配達を支える多くの個人事業主が補償の対象となり得ることを示し、個人事業主を労働力として利用する他の企業にも影響しそうだ。
 男性を支援するアマゾン労働者弁護団は声明を出し「労働者性を肯定し画期的だ」と評価。アマゾンが提供するアプリから配達ルートや荷物数など指示が出ていたことが重視されたとみている。
 東京都内で記者会見した男性は、仕事でけがをしながら泣き寝入りする仲間もいたが「誰かが言わないと、国も状況が分からない」と労災申請した理由を説明。認定を機に、過酷な働き方が是正されるよう願った。
 男性と業務委託契約していたアマゾンの下請け運送会社は「見解などについて、現時点では個別具体的な回答を差し控える」とコメントした。
 労組によると、男性は神奈川県横須賀市内の配達を担当し昨年9月、階段から落ちて腰を骨折。今年9月末に労災が認められ、国による50日分の休業補償が決まった。労災保険料を自己負担して補償を受けられる個人事業主向けの「特別加入制度」は利用していないという。
 労災の補償などを定めた労基法は、雇用契約した労働者が対象。個人事業主の場合、発注者の指揮命令を受け自己裁量が少ないといった場合に適用される。
 アマゾンを巡っては、男性を含む横須賀市の配達員が昨年6月、過酷な業務の改善を求めて労組を結成した。
 個人事業主 企業などの組織に属さず、発注者から個人で仕事を請け負う働き手。法令上の明確な定義はなく、インターネット通販や食事宅配サービスの配達員、IT技術者など広い分野にわたる。発注者に対し立場が弱い場合があり、報酬の未払い、遅延といったトラブルが多い。国は今年5月、個人事業主の保護に向けた新法を公布。発注者に、納期など取引条件を書面やメールで示すよう義務付け、成果物を受け取ってから60日以内に報酬を支払う必要があると明記した。