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日本歌曲を多彩に披露 伊藤京子さん追悼演奏会 パレット市民劇場


日本歌曲を多彩に披露 伊藤京子さん追悼演奏会 パレット市民劇場 「五つの断章」より「舟歌~片戀~」「希望」を披露する新垣寿賀子(メゾ・ソプラノ)
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 戦後の日本を代表するプリマドンナの一人、ソプラノ歌手で、2021年7月に94歳で亡くなった県立芸術大学元教授の伊藤京子さんの門下生らによる追悼演奏会「日本歌曲と共に―伊藤京子先生の想いをのせて―」が9月9日、那覇市のパレット市民劇場で開かれた。伊藤さんから指導を受けた声楽家らが企画した。伊藤さんは日本歌曲の魅力を広めようと歌い手の育成にも尽力した。その思いを引き継ごうと、教え子らが日本歌曲を多彩に披露した。司会は同大出身で琉球朝日放送の比嘉雅人が務めた。

 伊藤さんは、1942年に東京音楽学校(現東京芸術大)を経て、49年に第18回日本音楽コンクール第1位入賞し、翌50年にオペラデビュー。ベルディ「椿姫」など多くの作品でプリマドンナを務め、團伊玖磨氏の「夕鶴」のつうを当たり役とし、30年以上にわたって第一線で活躍した。国立音楽大学、名古屋音楽大学教授を経て、92年から97年まで沖縄県立芸術大学音楽学部教授に就任した。

 同コンサートは県立芸術大学や国立音楽大学の門下生らが企画し、コロナ禍で2年越しに実施された。伊藤さんの明るく朗らかな人柄をしのび、コンサートで伊藤さんとの思い出なども振り返った。同実行委員会代表の新垣寿賀子(メゾ・ソプラノ)が「五つの断章」より「舟歌~片戀~」「希望」を、嵩原奈月(ソプラノ)は反戦歌の「約束」などを独唱したほか、二重唱、三重唱の形式で多彩に歌い上げた。

フィナーレに全員で「故郷」を歌う出演者=9月9日、那覇市のパレット市民劇場

 伊藤さんの歌唱を録音した「この道」「赤とんぼ」の音源を流しながら、貴重な写真資料も公開された。フィナーレは出演者全員で「浜辺の歌」「故郷」を歌い、来場者も一緒に口ずさんだ。「ブラボー」の声や拍手に包まれる中、終演を迎えた。

 出演はほか古謝奈美子(ソプラノ)、金城真希(同)、新島奈美子(同)、大城治(バス)、山内昌也(テノール)、知念利津子(ソプラノ)、桑江律子(同)、上原夏樹(アルト)ら。

 (田中芳)