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ワンネス財団 片桐淳/傷ついた分だけ強くなれる<心の扉を開いたら 患者会・福祉団体便り>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

「傷ついた分だけ強くなれる」という言葉があります。日本の歴史を考えてみると、沖縄県は数々の被害を受けてきました。傷ついた人の割合を考えれば、沖縄の人は強くなれるポテンシャルを秘めているはずです。
確かにつらい過去を抱えながら、一生懸命努力し、穏やかな性格の人たちが皆さんの周りにも多いことに気づくことでしょう。私もたくさん会いました。一方で傷ついた体験から立ち直れず、あきらめてしまう人もいます。違いはどこからくるのでしょうか。
心理学には「心的外傷後成長」という言葉があります。これは、「危機的な出来事や困難な経験における精神的なもがき、闘いの結果で生じるポジティブな心理的変容」と定義されています。傷ついた体験をしたからこその成長や良い変化です。具体的には次の五つの変化があります。
(1)他人との関係性のポジティブな変化(2)新しい可能性との巡り合い(3)人間としての強さの実感(4)信心や信念の強さが強まる(5)人生への感謝の感覚が強まる。
これらの変化を体験するまでには、第1段階として「その出来事を考えたくなくても考えてしまったり、そのことにとらわれて集中できない」(侵入的思考)という段階があります。この段階から抜け出すには、同じ体験をした仲間や専門家に自己開示することが有効だと言われています。
この段階を抜け出すと、第2段階として出来事を客観視し、自分の考えをコントロールできるようになります(意図的思考)。
傷つき体験から立ち直れない方は、まだ第1段階にいると言えます。その場合、心を開いて誰かに話をしてください。身近に話を聞いてくれる人が見つけられないのなら、専門家に頼ってみるのも良いです。
次第に自分の考えがコントロールできるようになったら、「その体験からどんな成長があったか」をじっくり考えてみてください。さまざまな成長が見つけられるでしょう。
「まくとぅそーけー、なんくるないさ」と心から考えられるようになれば、これからさらに強く優しくなれるはずです。