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対応後手、傷口深く ジャニーズ会見 NGリストに不信感   


対応後手、傷口深く ジャニーズ会見 NGリストに不信感    ジャニーズ事務所の対応と主な反応
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ジャニー喜多川氏(2019年死去)の性加害問題を巡るジャニーズ事務所の対応は説明のたびに傷を深める悪循環の様相を呈している。
 対策を小出しにする及び腰の姿勢に不信感が高まり、所属タレントの起用を見直す企業が続出。「ジャニーズ」の看板も失う事態になった。
 リスク管理の専門家は「対応が後手に回り『追い込まれ感』がダメージを大きくした」と分析する。

暗転
 「いかに自分たちが内向きでいけなかったか。信頼を大きく損なってしまった」。
 今月2日、2度目の記者会見で東山紀之社長は粛々と語った。グループ名を含め、あらゆる「ジャニー」の文字を消し去る方針を示し、法を超えるレベルでの救済も約束。質問はやまず、2時間を超えた時点で会見を打ち切った。
 「解体的出直し」を打ち出して沈静化を図ったはずが、直後の4日には再び暗転する。会見を運営したコンサルタント会社が特定の記者らを指名しないようにする「NGリスト」を作成していたことが判明。事務所側は作成への関与を否定したが、会見の公正性に疑念の目が向けられることになり、混乱の収束はさらに見通せなくなった。

維持
 事務所の説明は後手に回り続ける。一連の問題で前社長の藤島ジュリー景子氏が初めて公に直接見解を説明したのは5月14日。カウアン・オカモトさんの告発会見からは約1カ月が過ぎていた。だが、会見は開かず動画と文書で「知りませんでした」と表明するのみ。事実認定も「ジャニー喜多川に確認できない」と避けた。質問を受けない一方的説明に批判は収まらず、8月末に外部専門家の「再発防止特別チーム」が調査結果を発表した後の9月7日に藤島氏と新社長の東山氏が初めて会見し、ようやく性加害を認めた。
 ただ「ジャニー」を冠する社名は「タレントが培ってきたエネルギーやプライドの一つ」と維持しようとした。

加速
 調査会社の帝国データバンクの調べでは、企業のジャニーズ離れが加速したのはこの会見が起点となった。
 所属タレントを起用していた上場企業65社のうち、起用見直しに転じたのは9月末時点で過半数の33社に上る。担当者は「他がやめるならうちも、という感じだった。2度目の会見内容を最初の会見で表明できていれば、ここまで企業が離れることはなかったかもしれない」と見る。
 また、企業の危機管理に詳しい後藤啓二弁護士は「マスコミの取材や内部告発で次々と新事実が明らかになり、ずるずると不祥事を引きずってしまう企業は多い。ジャニーズ事務所もそうだ」と指摘。今年3月に問題を報じた英BBCが取材を進めている時点で今回の事態は予想できたといい「早期に被害者救済や新たな社会貢献活動に取り組み、ガバナンス体制を刷新していれば、社会の見方は変わっていた」と語った。