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認知症、手前でチェックを/家庭や地域で手軽に検査


認知症、手前でチェックを/家庭や地域で手軽に検査 軽度認知障害(MCI)の早期発見を試みる実証実験で、香料を嗅ぐ参加者(右)=6月、茨城県古河市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 家庭や地域の予防講座などで、認知症になる手前の軽度認知障害(MCI)を手軽にチェックできるツールが注目を集めている。病院に行くのはハードルが高いが、においを嗅いだり、アプリを使ったりと日常生活に取り入れやすいのが特徴だ。結果を行政や医療機関につなぐことも期待される。
 6月、茨城県古河市にある会議室では、高齢者がカップ内の香料を嗅いでいた。においが分からなくなる症状は認知機能低下と関わりがあるとされ、早期発見を試みる実証実験だ。
 リンゴや木など身近なはずの香りに悩む参加者の姿も見られたが、坂入憲さん(76)は「機能の衰えは自分ではぴんとこないから、客観的に結果が出るのはありがたい」と笑顔で話した。
 予防医療事業を手がける「プリメディカ」(東京都港区)が発案。65歳以上の約30人が1カ月間、朗読や体操の予防講座に参加し、初日と最終日に嗅いだにおいが何かを当てる検査を受ける。検査キットは製薬会社が開発した。
 プリメディカ顧問の徳田忠弘さん(68)は「遊び心があり、生活習慣を改善する動機になる。嗅覚検査を予防講座に取り入れる利点は大きい」と話す。
 厚生労働省によると、認知症の人は2012年時点で約460万人、その手前の段階のMCIは約400万人いると推計されている。MCIの状態は生活に大きな支障はないが、放置すると数年で認知症になる例もあり、早期発見と対策が重要だ。
 筑波大は発話を解析し、滑らかさや語彙(ごい)などからMCIかどうかを判定するモバイルアプリを開発中だ。写真を言葉で説明する、動物の名前を多く挙げるといった課題を解く。試作品ではMCIの人を8割以上の精度で割り出せた。
 新井哲明教授(神経病理学)は「病院での治療や行政での予防事業につなげることが重要。アプリはその一歩として、心理的にも身体的にもハードルが低く、有用だ」と強調。数年後の実用化を目指している。

軽度認知障害(MCI)の早期発見を試みる実証実験で、香料を嗅ぐ参加者(右)=6月、茨城県古河市