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「共働き できなくなる」 解散にらみ党本部も懸念


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 埼玉県議会の自民党県議団が今月4日に提出した虐待禁止条例改正案は、わずか6日で撤回に追い込まれた。子どもの留守番も認めない内容に、子育て世代から批判が殺到。他会派も「女性の社会進出を妨げる」と反発し、インターネット上では署名活動が広がった。次期衆院選をにらむ「身内」の自民党内からも懸念が漏れていた。
 「お留守番禁止条例だ。生活が回らなくなる」「子どもの付き添いをすることで(仕事と両立できず)、経済的に共働きが必要なのに家庭の収入が断たれてしまう」―。6日に開かれた福祉保健医療委員会で他会派が市民の声を紹介した。
 改正案には「放置」を確認した場合の通報義務も盛り込んだため、警察や児童相談所の負担増も問題視された。
 自民党県議団の小久保憲一県議は通園バスなどに放置された子どもの死亡事故多発に触れ、「放置は危険だという意識改革をする必要がある」と理解を求めたが、子育て世代を中心に不安の声は一気に広がった。
 さいたま市のPTA協議会は7日、「近隣住民からの通報におびえ、仕事への復帰や社会参画への意欲がそがれてしまう」などとする意見書をホームページで公表した。
 ネットの署名サイトでは、撤回を表明した10日午後2時ごろまでに、8万人を超える署名が集まった。賛同者からは「子どもや親を家庭に縛り付ける最悪の条例」「子育てなんかしたことない人たちが考えてそう」と厳しい声が寄せられた。
 県議団の田村琢実団長は取り下げ表明の会見で自身の説明不足を理由に挙げ「議案の内容に瑕疵(かし)はない」と悔しさもにじませる。
 ただ、党本部周辺からは次期衆院選への影響を危ぶむ声が。ある国会議員秘書は「埼玉の自民党は子育てが分かっていないイメージになる。もらい事故だ」とこぼした。