その道は熊が出るらしいよ。でも、大好きな彼に会うにはその道を通るしかない。さぁ、あなたならどうする?
信心深く、風習を大切にするイランの人々は、熊が出る道を通らずに生きてきた。もちろん「熊」は、ものの例え。祖先の言い伝えを守り、禁を犯さず、質素に暮らす彼らは、目に見えぬ「熊」や「神」や「災い」に出会わぬ道を選び、小さな集落の調和を保つ。
多くを望まず、調和を重んじるつつましいその生き方は美しい。ただ同時に、それは大きな力に争わない生き方でもある。調和を重要視するあまり、熊がいる道を通ることが「危険」ではなく「罪」となり、「あの道に熊はいないんじゃないの?」という至極まっとうな指摘を封じ込める圧力が生まれる。
そんな力に屈することなく、疑問を呈し、争い続けているのが本作の監督、ジャファル・パナヒ。映画制作禁止を言い渡したイラン政府に争い、極秘撮影を敢行。イランのリアルな現実をスクリーンに映し出す。(桜坂劇場・下地久美子)
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熊は、いない/桜坂劇場・あす公開/イランのリアルな現実
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この記事を書いた人
琉球新報朝刊
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