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国会権威おとしめ退場 細田議長辞任 説明尽くさず


国会権威おとしめ退場 細田議長辞任 説明尽くさず 記者会見で質問を聞く細田博之衆院議長=日午後、衆院議長公邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 細田博之衆院議長は、自身を巡る問題に十分な説明を尽くさないまま退く道を選んだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や女性記者へのセクハラ疑惑といった報道に関し、記者会見で追及されたが「無関係」「うわさ話」とかわすことに終始。50分余りで強引に会見を幕引きした姿勢は、三権の長と国会の権威をおとしめた。
 「特別な関係はない。会合に呼ばれれば出る程度の問題だ」。13日、議長公邸。細田氏は教団との接点を問う記者をいなした。会合への出席が「広告塔に使われたのではないか」とただされると「飛躍し過ぎだ」と反論。のれんに腕押しのようなやりとりを続けた。
 セクハラ疑惑については「誰ひとり具体的なものはない」と一蹴。被害女性が名乗り出る難しさを指摘されても「男性に対し『セクハラだ』と述べ立てるのは、男性へのセクハラではないか」と持論を口にしてみせた。
 細田氏は自民党の最大派閥・清和政策研究会(現安倍派)の会長在任時、国政選挙で教団票を差配したのではないかと取り沙汰された。安倍晋三元首相亡き今、野党は自民と教団との接点を象徴する存在として狙いを定める。会見後、立憲民主党の安住淳国対委員長は「疑惑は晴れない。国会で大きな焦点にしたい」と記者団に予告した。
 議長辞任後も議員活動は続行し、次期衆院選の立候補に意欲を示す細田氏には、与党内ですら「矛盾している」と疑問視する声が相次ぐ。会見前には、周囲が「次の選挙に出るなんて言わない方がいい」と助言したものの、細田氏は聞く耳を持たなかった。
 脳梗塞の悪化ではなく、ぼうこう炎に起因する持病を抱えただけで支障はないというのが細田氏の言い分。自民ベテランは「本会議は欠席するなど、相当サボらないと体力的に無理だ」と皮肉る。
 細田氏は地方鉄道維持や原発政策に関与してきたと訴え「私以外の人ができる仕事ではない」と自負をのぞかせた。だが内情を知る関係者は打ち明ける。「細田氏が引退表明すれば、地元の島根でやっかいな後継者争いが起きるんだ」
 会見の在り方を巡っても議長側と記者クラブの間で応酬があった。
 議長サイドは(1)会見時間は30分(2)参加者は国会を取材する記者クラブ加盟社から各社1人(3)映像と写真の撮影は冒頭発言時のみ―の3点を提示。クラブ側は(1)少なくとも1時間以上(2)フリージャーナリストの参加(3)質疑応答部分の映像と写真撮影―を要求した。
 結果的に会見全体の撮影は認められたものの、参加した記者計28人のうち質問できたのは記者クラブの幹事社を含め9社だけだった。
 立民の泉健太代表は、「NGリスト」があったジャニーズ事務所の会見に言及。「ジャニーズよりも制約が多い」と切り捨てた。