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国際社会 分断広がる ガザ侵攻 米、作戦中止求めず


国際社会 分断広がる ガザ侵攻 米、作戦中止求めず ガザ情勢巡る相関図
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻に向け、準備を加速させている。既に3千人を超えた今回の大規模戦闘での死者が「次の作戦段階」(イスラエル軍報道官)で大幅に拡大するのは必至だ。しかし、米欧諸国はイスラエルと連帯、アラブ諸国はイスラエルを非難し、国際社会は分断。戦闘激化を前になすすべなく、地域紛争が現実味を帯びている。

最終目標

 「軍の予備役兵は次の作戦段階に向け、ガザ周辺で準備を完了している」。イスラエル軍は13日、ガザで限定的な地上作戦を初めて実施した。翌14日午前、軍報道官はガザ攻撃の最終目標を記者団に語った。「ハマスを解体し、その軍事力を消滅させ、ハマスがイスラエルの市民にいかなる被害も与えられなくなるよう状況を根本的に転換して、この戦争は終わる」

 イスラエル軍は12日深夜、ガザ北部の住民110万人に対し、24時間以内に南部へ避難するよう通告した。14日には、同日夕までは避難を認めると発表。その後の対処には言及しなかった。既に過去最多の予備役兵36万人を招集し、ガザ周辺に戦車を集結させている。

イスラエル支援

 「不明者の生還に向けてできることは何でもすると請け負った」。バイデン米大統領は13日、ハマスとイスラエルの戦闘で行方不明となった米国人の奪還に決意を表明。ガザの人道危機解消が最優先事項だと語った。だが、イスラエルにガザ地上侵攻の中止を訴えることはなかった。昨年2月、ロシアにウクライナ侵攻を思いとどまるよう強く求めたのと対照的だ。

 ブリンケン米国務長官は12日、オースティン米国防長官は13日、相次ぎイスラエルを訪れ、イスラエルへの支持や全面的な軍事支援を表明した。

 ユダヤ人迫害の歴史を持つ欧州からは、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長やドイツのベーアボック外相が13日にイスラエル入りし「ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)以来の蛮行だ」などと異口同音にハマスを非難した。

 ただ、こうした「イスラエル詣で」はガザから民間人を退避させる人道回廊設置など「人道危機の緩和」(欧州議会のメツォラ議長)が主眼。地上侵攻は不可避との前提が透けて見える。

パレスチナ擁護

 アラブ諸国は欧米と異なり、事態悪化の責任はイスラエルにあるとの見方が支配的だ。パレスチナ解放のため4度、イスラエルと戦争した歴史があり、市民の間でも反イスラエル感情が強い。

 米国の仲介でイスラエルとの国交正常化交渉を進めていた盟主サウジアラビアも、実権を握るムハンマド皇太子がパレスチナの権利擁護を強調。ロイター通信は、サウジが国交正常化交渉を凍結する方針だと伝えた。

 イスラエルと敵対するイランのライシ大統領は11日、ガザ情勢を巡ってムハンマド皇太子と電話会談した。イラン大統領府関係者は、イスラエルの「戦争犯罪」を終結させる必要性を話し合ったと説明した。

 イランの支援を受けるレバノンの民兵組織ヒズボラは、ハマスに呼応するようにイスラエル攻撃を開始。戦線の拡大が懸念されている。

 グテレス国連事務総長は13日、米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、イスラエルとパレスチナの双方の立場に配慮を示した上で「私たちは重大な岐路にいる。さらなる暴力を避け、紛争が域外にまで拡大しないよう、最善を尽くすことが必須だ」と訴えた。

(共同通信)