小さい子どもが集まる保育所で地震が起きたら、ちゃんと避難できるのか―。そんな懸念を払拭しようと、三重県伊勢市の建設会社が幼児向けの耐震シェルターを開発した。逃げ込めば、建物が倒壊しても圧死せずに済む仕組みで、平時は遊べるよう壁にボルダリングの取っ手を付けた。社長は「普段の遊び場が子どもたちの命を守るとりでになれたら」と話している。
「扇光」が販売する木造の「かめさんルーム」で、幅199センチ、奥行き119センチ、高さ138センチ。3歳児なら15人前後が避難できる広さで、2トンの重さにも耐えられる構造だ。
開発のきっかけは、2017年に三重県四日市市で開催された展示会だった。住宅に設置できる耐震シェルターを何度も出入りし「秘密基地みたい」とはしゃぐ子どもの姿に、中西宏光社長(62)が「保育園や幼稚園に置いたら、進んで避難してくれるのではないか」とひらめいた。
「遊んでいるうちに防災への意識が高まったら、よりいい」と、外壁に太陽や動物のイラストを描き、登り降りできる取っ手も付けた。危険を察知すると手足や頭を甲羅の中に隠すカメにちなみ「かめさんルーム」と命名。子どもたちになじみの深い童謡「うさぎとかめ」もヒントになった。
開発に際し、現場の保育士にも意見を聴いた。
中西社長に助言した女性保育士(62)が勤務する埼玉県の保育園では、地震が起きたら防災頭巾やぬいぐるみで頭を守るよう指導しているが、園舎が倒壊するほどの揺れには対応できない。女性は「子どもたちにとって、かぶり慣れていない防災頭巾で頭を守るより、シェルターに駆け込む方が簡単だ」と話す。死角になりかねず、登り降りする際にけがをする危険もあるため「十分に注意したい」とも語った。
8月24~25日に大阪市で開かれた展示会に足を運んだ佐藤寿哲・四條畷学園大准教授(53)は「面白い取り組みだ」と評価する。一般住宅向けの耐震シェルターは多くの自治体で補助金制度の対象になっており、「子ども用シェルターにも補助金を出すべきではないか」と提案した。
「かめさんルーム」について、佐藤寿哲・四條畷学園大准教授(右)に説明する扇光の中西宏光社長=8月、大阪市
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遊び場「耐震シェルター」に 三重 建設会社、幼児向け開発
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琉球新報朝刊
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