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無理解で孤立、悪循環断つ 「ありのまま」受容後押し 少年院の発達障がい支援 傾聴 「2次障害」 ネック


無理解で孤立、悪循環断つ 「ありのまま」受容後押し 少年院の発達障がい支援 傾聴 「2次障害」 ネック 少年院の発達障害支援のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 発達障害が指摘される子どもは増加傾向で、少年院では、こうした在院生の立ち直りに向けた支援の在り方を模索し続けてきた。障害への無理解から孤立し、犯罪に手を染める以外の道を失う―。この「悪循環」を断ち切る第一歩は、ありのままの自分を受け入れること。職員と専門家が連携して少年に寄り添い、時にそっと背中を押す。
 「悪い感情を出したら負けだと思う」。9月、茨城県牛久市の少年院「茨城農芸学院」の「発達相談」の最中、少年が見せた表情は硬かった。発達障害の支援に力を入れる同学院。この少年は、自分を責めてストレスをためやすい傾向があると指摘されている。相談は月1回で、発達心理に詳しい専門家3人が30分ほどかけ話を聞く。
 少年の考えが偏っていると否定することは一切しない。専門家の1人は、非行に及んだ時「本当は親にどう向き合ってほしかったか」と問いかけた。「何に悩んでいるか聞いてほしかった」。少年から思わず本音が漏れる。自分の苦しさを押し殺さなくてもよいと気付いたようだった。
 こうした傾聴姿勢は、法務省の処遇ガイドラインで、発達を促す基本姿勢とされる。悩みを受け止め、対話の中で気付きを促す「伴走型支援」は、ガイドライン改定で、職員の姿勢としてさらに重視される見込みだ。
 発達障害は、早期発見の重要性が認知されたことで、指摘される子どもが増えたとされる。文部科学省の2022年の抽出調査では、公立小中学校の通常学級の子の8・8%に発達障害があると推定。12年の前回調査から2・3ポイント増となった。
 法務省幹部は「発達障害が非行に結び付くわけではない」と強調。わがままだなどと誤解され、自尊心が低下する「2次障害」こそ課題だとし「障害が見過ごされ『少年院で初めて支援を受けた』という声は珍しくない」と明かす。
 16年のガイドライン策定から約7年。「職員が記載事項を守るのが当たり前になった」(支援関係者)と評価されるほど、発達障害に配慮した処遇への理解は進んだ。
 ネックとなるのが少年院の生活環境だ。発達障害は感覚過敏を伴う場合があり「冷房が不十分で、暑すぎて眠れない」との訴えも。ただ、施設整備には多額の予算が必要で、どこまで対応できるかが課題になる。
 長年、茨城農芸学院の発達相談に参加する日本大の高橋智教授(特別支援教育)は「少年院は規則的な活動や温かい指導方法が確立されており、発達障害のある在院生が力を伸ばせる基盤がある。生活環境が改善すれば、より立ち直りを後押しできる」と話している。
少年の発達相談に臨む日本大の高橋智教授(左)ら=9月、茨城県牛久市の茨城農芸学院