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コンビニ食で生活改善/台東病院内で実証/品ぞろえ工夫、売り上げ増


コンビニ食で生活改善/台東病院内で実証/品ぞろえ工夫、売り上げ増 カップ麺の食塩含有量別販売割合の変化
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 そこで食品を買う人の食生活は改善され、店も売り上げが増える―。商品の品ぞろえや並べ方を工夫することで、そんなコンビニ経営が可能であることを、地域医療振興協会(東京都)ヘルスプロモーション研究センターと台東区立台東病院(同)、女子栄養大(埼玉県坂戸市)のチームが研究で実証した。

底上げ

 研究の舞台となったのは同病院内のコンビニ。病院が目指す「職員の食生活改善支援」に、同研究センターの研究員で管理栄養士の川畑輝子さんらが協力することになったのがきっかけだ。
 まずは2018年、全職員約270人に対する調査で「主食、主菜、副菜のそろった食事をほぼ毎日取る人は14%」「約9割が野菜不足、約7割が果物不足」「97%が食塩を取り過ぎ」といった実態が判明する。
 「職員食堂はなく、約3割が職場での食事を主に院内のコンビニで買ったおにぎりやカップ麺で済ませていた。ここを変えれば、全体を底上げする支援ができるのではと考えた」と川畑さん。

自発的

 米国や英国では、地域の食生活を改善する上で病院のリーダーシップが注目され、病院内で提供、販売される食品や飲料をより健康的なものにする取り組みが進む。
 それを参考に川畑さんらは、職員が自発的に食生活改善に向かうよう促す五つの対策を立てた。
 まず「主食、主菜、副菜がそろい、野菜たっぷりで食塩控えめ」という基準で商品を組み合わせた「ヘルシーセット」を福利厚生の一環として職員に限り500円で販売。一つのトレーにのせ、レジの横に並べた。
 曜日で変わるヘルシーセットのメニュー表を目立つ場所に置き、エネルギーが少なめのメニューには果物などの追加を促す表示を工夫。
 加糖と無糖の飲料の割合を従来の7対3から4対6とし、手に取りやすい所に無糖を置いた。
 カップ麺は食塩の多い商品ほど下の棚に置き、横に食塩1グラム入りの袋を含有量分だけ並べた。
 全食品についてエネルギー、食塩量、税込み価格をラベルで表示した。

健康守る拠点に

 これらの対策を19年4月に始め、18年と20年の調査の両方に答えた140人のデータを分析した。
 主食、主菜、副菜のそろう食事を1日2回以上ほぼ毎日取る人は16%から21%に増え、果物や牛乳、乳製品の摂取量も増加。お菓子や嗜好(しこう)飲料の摂取量は減った。体格指数(BMI)は「痩せ」の割合が10%から4%に減り、「普通」が68%から73%に増えた。
 一方、19年4~12月の店の総売り上げは前年同期に比べ7%増。商品別の売り上げはサラダや野菜の総菜、ヨーグルト、無糖飲料がいずれも約4割増えたのに対し、カップ麺や加糖飲料は1割減。
 カップ麺の販売割合は食塩の少ない商品が増え、多い商品は減った。
 「対策は職員に好意的に受け入れられ、コンビニをよく利用する人はラベル表示などの情報を商品選択に活用していた」と川畑さん。中村正和・研究センター長は「同様の効果は病院の外にあるコンビニでも期待できる。コンビニは食を通じて地域の健康を守る拠点になり得るのでは」と話す。

川畑輝子さん

店内に置かれた「ヘルシーセット」のメニュー表(川畑輝子さん提供)