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1票の格差3・03倍「合憲」 7月参院選、最高裁が判断


1票の格差3・03倍「合憲」 7月参院選、最高裁が判断 昨年参院選の「1票の格差」訴訟で最高裁の各裁判官の判断
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「1票の格差」が最大3・03倍だった昨年7月の参院選が投票価値の平等を求める憲法に違反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は18日、格差を合憲と判断した。二つの弁護士グループによる選挙無効の請求を退ける判断が確定した。
 人口の少ない隣接県同士の「合区」が2016年選挙から導入されて以降、選挙への関心や投票行動に影響を与えている問題点に初めて具体的に言及しつつ一層の格差是正を求め、選挙制度を巡る今後の議論に影響しそうだ。
 戸倉裁判長は、合区対象の4県で投票率低下や無効票増加といった事態が起きている点を踏まえ「一層の選挙区見直しには慎重に検討すべき課題があり、広く理解を得て成案を得るには一定の時間が必要だ」と指摘。合区導入後はそれまで5倍前後の格差が3倍程度で推移し、拡大傾向も見られないとして「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態だったとはいえない」と判断した。
 国会の参院選挙改革の取り組みについては「具体的な検討が進展しているとは言いがたい」とし、都道府県を単位とする現行の選挙区見直しも考えられると言及。合区対象県での投票率低下などの問題を踏まえると「有権者には都道府県ごとに地域の実情に応じた国会議員を選出するとの考えがなお強い」として、検討にはさらなる時間を要すると結論付けた。
 ただ一層の是正は「喫緊の課題だ」とも述べ、「現行制度の抜本的な見直しも含めて方策を講じていくことが求められる」と国会に要請した。
 裁判官15人のうち、合憲との見解を示したのは戸倉裁判長ら12人。三浦守(検察官出身)、尾島明(裁判官出身)の両裁判官は違憲状態と判断し、宇賀克也裁判官(学者出身)は違憲・無効を主張した。
 近年の参院選で大法廷は「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区が導入された16年選挙(3・08倍)と、続く19年選挙(3・00倍)をいずれも合憲と判断。合区は昨年の選挙でも維持され、格差は19年からやや拡大した。
 昨年7月10日投開票の参院選では、選挙区の議員1人当たりの有権者数が最少の福井県と、最多の神奈川県との間で3・03倍の格差が生じた。