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感謝込め2演目 フィナーレに涙/与座ともつね追悼公演/「渡地物語」「首里上り小」


感謝込め2演目 フィナーレに涙/与座ともつね追悼公演/「渡地物語」「首里上り小」 「渡地物語」を演じる蒲太役の川武由明(右)と遊女チルー役の与座由佳
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 沖縄芝居の劇団与座は9月24日、3代目座長で2020年7月に84歳で亡くなった与座ともつねを追悼する公演を浦添市の国立劇場おきなわで開いた。20年に新型コロナの影響で中止となった歌劇「渡地物語」(高江洲紅矢作、新垣勝夫演出)と、喜歌劇「首里上り小」(伊良波尹吉作、瀬名波孝子演出)を、ともつねへの追悼の思いを込めて上演した。公演は昼夕の2回で、夕方を取材した。
 沖縄芝居一筋70年。ともつねは兄の与座朝惟と共に看板役者「与座兄弟」として人気を集め愛された。長年交流のあった沖縄芝居役者や舞踊家らが特別出演し、舞台に花を添えた。
 第2部に「渡地物語」を上演した。首里での奉公を終えた久米島の青年蒲太と渡地の船宿で偶然出会った遊女チルーの恋を描く。川武由明が蒲太役、ともつねの孫・与座由佳がチルー役を務め、宿屋の主を〓宮城実人、その妻を瀬名波孝子が演じた。公演の幕あいに、ともつねの妻・与座喜美子が観客に向けて「感謝の気持ちでいっぱい」と語り盛大な拍手に包まれた。
 第1部は「首里上り小」も披露された。廃藩置県後の那覇を舞台に、遊郭に入りびたるサンデーの下に妻が乗り込む。朝惟の長男で今年4代目座長に就任した与座朝奎がサンデー役を担った。ドタバタな展開に、会場は笑いに包まれた。
 フィナーレには出演者全員が舞台に登場し、涙をこらえる役者の姿も。「渡地物語」で蒲太の父役を演じた新垣勝夫が「わが師匠の与座ともつねがこんなに多くの人々に愛されていたのだと深く感謝する。本人も空から喜んでいると確信している。これからも沖縄の文化や沖縄芝居を守っていく」と決意を語った。
 公演後に「渡地物語」のチルー役を演じたともつねの孫の与座由佳は「祖父の三回忌に、追悼公演を実現できて良かった。後半は特に祖父を思い出した。祖父の指導を受けられないのは寂しいが、祖父に見せるために頑張れた」と振り返った。 (田中芳)

喜歌劇「首里上り小」を演じるサンデー役の与座朝奎(右端)ら=9月24日、浦添市の国立劇場おきなわ

「渡地物語」を演じる蒲太役の川武由明(右)と遊女チルー役の与座由佳