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首相、所得減税の検討指示 期限付き措置 年末までに具体案


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相は20日、自民党の萩生田光一政調会長ら与党幹部と官邸で面会し、所得税減税も含め税収増の還元策を検討するよう指示した。減税は一定額を納税額から差し引く形で期限付きとする方向。11月2日の閣議決定を目指す経済対策の柱とし、具体的な減税規模や期間、対象は年末にかけて与党の税制改正議論で詰める。宮沢洋一自民党税制調査会長は記者団の取材に、減税期間は「1年というのが極めて常識的だろう」と語った。
 所得税を納めていない低所得や高齢の非課税世帯には減税の恩恵が及ばないため、給付での対応を検討する。政府が賃上げの旗を振る中でも依然として賃金が物価上昇に追い付かず、家計の負担感が強まっていることに対応する姿勢を示す狙いがある。ただ財政規律を重視する与党議員からは慎重論もあり、議論は曲折も予想される。
 減税は法改正を伴うため、年明けの通常国会を経て実現した場合でも、国民が納税額の減少を実感できるのは早くても来春以降になりそうだ。
 減税の手法に関しては、宮沢氏は本来の納税額から一定額を差し引く「定額減税」が望ましいとの見解を示した。納税額から一定割合を差し引く「定率減税」という手法もあるが、高所得者層ほど恩恵が大きくなる。
 日本の財政は、膨張する歳出を税収だけでは賄えず、借金である国債に頼る赤字運営が続いている。国債残高は23年度末に1068兆円まで拡大する見通し。今後は所得税、法人税、たばこ税の防衛増税も予定され、衆参両院の補欠選挙投票を目前にしたタイミングでの減税指示には、財政規律やこれまでの増税方針と整合性の問題を指摘する声がある。