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物価高対策の効果疑問


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田首相が検討を指示した所得税減税の効果を国民が実感できるのは、早くても来春の見通しだ。家計を圧迫する足元の物価高対策としては効果に疑問符が付く。防衛力強化の増税も控え、政策のちぐはぐ感は否めない。
 所得税減税は法改正が必要で、年明けの通常国会で審議することになりそうだ。これが実施までに時間がかかる理由となり、即効性を欠く。所得税を納めていない低所得や高齢の非課税世帯を対象とした給付措置との組み合わせの具体化に手間取る可能性もある。
 政府は防衛力強化のため、法人、所得、たばこの3税を増税し、年間1兆円超を捻出する計画だ。一方で、首相肝いりの少子化対策でも年3兆円台半ばの追加予算が必要になる。財源はとりあえず借金の一種である「つなぎ国債」の発行で確保する計画だ。
 国の財政が危機的状況にあり、防衛増税も控える中、減税というアメを打ち出しても、家計の一時的な足しにしかならない。物価高を克服できるだけの賃金上昇の一刻も早い実現が求められる。