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首相、難しいかじ取り 「親中優先」、保守層反発も


首相、難しいかじ取り 「親中優先」、保守層反発も 日本と中国を巡る構図
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日中平和友好条約の発効から23日で45年。両国は東京電力福島第1原発の処理水海洋放出で対立し、関係は冷え込んだままだ。岸田文雄首相は中国の習近平国家主席との会談を実現させ、低迷する内閣支持率の反転を狙う。ただ、日中間に課題が山積する中、親中国の動きを優先すれば国内保守層の反発を招くリスクもある。難度の高いかじ取りに直面している。
 「習主席とは建設的かつ安定的な日中関係の構築という大きな方向性で一致している。双方の努力で確実に進めていく必要がある」。首相は18日、北京で開かれた日中フォーラム夕食会に書面メッセージを寄せ、関係改善に意欲を示した。
 岸田政権が2021年10月に発足後、首相と習氏の会談は昨年11月にタイで行った1回だけ。電話会談も1回にとどまる。首相側近の木原誠二・自民党幹事長代理は「あまりに少なすぎる。課題があるからこそ対話を繰り返さないといけない」と訴える。
 日本側が首脳会談にこだわる背景には、処理水放出による対立が長引けば、日本経済への悪影響が拡大するとの懸念がある。日本にとって最大の貿易相手国である中国について、首相は「切っても切れない仲だ」と言い切る。
 視野に入れるのは、11月に米国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のタイミングだ。日本政府筋は「同じ場所にいれば会おうという雰囲気になる」と対話実現に期待を隠さない。
 一方、外交筋は「中国は、首相が政権維持できるかどうかを必死に情報収集している」と明かす。共同通信が今月実施した世論調査で、岸田内閣の支持率は過去最低の32・3%に落ち込んだ。中国側が岸田政権の耐用年数を低く見積もれば、首相と会談する意義を見いだすのは難しくなる。
 日中間には、処理水放出以外にも、尖閣諸島を巡る対立や中国当局による邦人拘束、台湾問題、半導体規制など火種がくすぶる。中国側からは「関係改善に向けた首相の行動が見えない」との不満が漏れる。
 首相は、安倍晋三元首相の岩盤支持層とされた保守層の動向に気をもむ。対中融和姿勢を強めることで保守層が離れてしまえば、政権基盤を揺るがしかねない。日本政府関係者は「今の首相の立場を考えれば、思い切った行動には出づらい」と吐露した。