有料

日中 首脳会談前向き 平和条約45年 対立解決策探る


日中 首脳会談前向き 平和条約45年 対立解決策探る 首相官邸に福田赳夫首相(右から2人目)を訪ね、懇談する(左から)中国の廖承志全人代常務委副委員長、鄧小平副首相。右端は園田直外相=1978年10月、首相官邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日本と中国が善隣友好の精神をうたった日中平和友好条約の発効から23日で45年を迎える。中国は世界第2位の経済大国となり、逆転された日本との国力の差は拡大。覇権主義的な動きを強め、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡る対立が続く。岸田文雄首相は「建設的で安定的な関係構築」を提唱。中国も首脳対話に前向きな姿勢を示しており、双方は会談実現へ模索している。

 条約は1978年10月に発効。当時の福田赳夫首相と来日した中国の最高実力者、鄧小平副首相が批准書の交換式に出席した。恒久的な平和友好関係を発展させ、両国は覇権を求めるべきではないと明記した。

 日本は、鄧氏が主導し78年に始めた改革・開放政策を後押し。中国向け政府開発援助(ODA)を通じ、経済発展を支えた。2010年、中国の国内総生産(GDP)は日本を上回り、22年には4倍超に差が広がった。

 中国は軍事力も急拡大。12年の日本の尖閣諸島国有化を機に、周辺で領海侵入を繰り返し領有権を主張する。22年の台湾周辺での大規模軍事演習では日本の排他的経済水域に弾道ミサイル5発を落下させた。日本は米国と連携し抑止力強化を図る。

 今年3月、中国当局が北京でアステラス製薬現地法人幹部をスパイ容疑で拘束し、その後逮捕した。8月には処理水放出に反発する中国が日本産水産物の輸入を停止し、関係は一層冷え込んだ。

 岸田首相は9月にタイで李強首相と立ち話し、処理水を巡る日本の立場を説明したが平行線だった。局面打開に向け、11月に米国で開かれるAPEC首脳会議に合わせ習近平国家主席との会談を探る。中国側も対日重視の意向は伝えているものの、関係改善への展望は開けていない。


<用語>日中平和友好条約 1978年8月12日に北京で署名調印し、同年10月23日に発効した日中両国の平和関係を規定する条約。第1条で主権・領土保全の相互尊重、相互不可侵を基礎に恒久的な平和友好関係を発展させると明記。第2条で両国は覇権を求めず、覇権確立のいかなる試みにも反対するとした。第3条には経済、文化関係の発展と両国民の交流促進を掲げた。

(共同通信)