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【記者解説】岸田首相の所信表明、「基地負担軽減」に逆行 日米同盟の強化掲げ、さらに増す沖縄の負担


【記者解説】岸田首相の所信表明、「基地負担軽減」に逆行 日米同盟の強化掲げ、さらに増す沖縄の負担 衆院本会議で所信表明演説をする岸田首相=23日午後
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田首相は23日の所信表明演説で「自衛隊の統合運用の実効性」の向上を打ち出した。関連して「日米同盟の抑止力・対処力」の強化も掲げた。政府は、台湾有事を念頭に、2024年度末に陸海空3自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」を立ち上げ、日米連携を高める方針を示している。軍事面での日米一体化の方向性を明確にした形だ。

 陸自と米海兵隊は14日から県内・九州各地で、離島防衛を想定した国内最大規模の日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」を展開中だが、こうした訓練や演習が今後、さらに増えることも予想される。所信表明で言及した「基地負担軽減」に逆行し「基地負担」はさらに増大する流れだ。

 米軍普天間飛行場の全面返還のために「辺野古への移設工事を進める」とする従来の立場にも変化はなく、21年10月、同12月の所信表明演説で強調していた「丁寧な説明」「対話による信頼」も、22年10月の所信表明演説に続いて触れられなかった。この点を踏まえ、政権幹部に「基地負担軽減」についての政府の認識を問うと、米軍北部訓練場過半や米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区跡地の返還を実績として挙げ「(首相は)引き続き結果を出す」とした。返還事例を強調するのは、沖縄政策で安倍晋三元首相の強行路線を踏襲した菅義偉前首相の常とう句だった。

 政権発足当初に自身の政治姿勢として繰り返していた「聞く力」を前面に出すことはもはやなくなった。岸田首相は、演説の結びで「変化の流れをつかむ」ことを強調した。沖縄に対する姿勢も「融和」から「強硬」へと変化させたようだ。

 (安里洋輔)