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幼児の視力異常 早期発見を/治療で正常な発達期待/3歳児健診導入で効果


幼児の視力異常 早期発見を/治療で正常な発達期待/3歳児健診導入で効果
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ものを見る力は成長とともに発達する。生後、はっきりと見えない状態から、眼球の形が変わり、視覚に関わる脳の働きも発達することではっきりと見えるようになる。しかし、何らかの原因で発達が妨げられると「弱視」になる可能性があり、早期に異常を見つけて治療する必要がある。

視覚感受性期間

 日本弱視斜視学会理事長の佐藤美保・浜松医科大病院教授によると、生まれたばかりの赤ちゃんの目は未完成で、軽度の遠視となっている。そこから眼球の奥行きである「眼軸長」が伸び、遠視が改善されていく。
 並行して、視覚情報を処理する脳の働きも発達。生後1~3カ月に0・01~0・05だった視力が1歳では0・1、3歳では0・3~0・5、5~6歳では1・0と徐々によくなっていく。
 この「視覚感受性期間」に、(1)目に入る情報がぼやける(2)目に入る情報に左右差がある(3)視覚情報が目の中心に届かない―といった状況が続くと脳の機能の発達も妨げられ、眼鏡やコンタクトレンズを使っても視力が1・0に満たない「弱視」となってしまう。

遠視、乱視が原因

 「見えていたものが見えなくなるわけではないので、本人も周囲も異常に気付かない」と佐藤さん。重症の場合、「目を細める」「顔をしかめる」「極端に近づいて見る」といった行動を取ることがある。ただ、必ず取るとは限らないという。
 早い段階で異常を見つけることができれば、治療によって正常な発達が期待できる。
 例えば、目に入る情報がぼやけるのは両目の遠視か乱視が原因であることが多く、眼鏡による「屈折矯正」をする。片方の目が遠視や乱視などのため、目に入る情報に左右差がある場合には、良い方の目にアイパッチをするなどして悪い方の目の発達を促す。
 「早期に治療を始めると結果が良いとされています」(佐藤さん)

精密検査は早めに

 早期発見のチャンスとして注目されているのが、3歳児健診だ。
 従来、多くの自治体では家庭での視力検査と保護者へのアンケートが中心で、子どもが良い方の目でのぞき見したり、保護者が「見えないはずがない」と思い込んだりして、見落としにつながっていたという。
 ところが数年前、遠視や乱視などの屈折異常を簡単な操作で検出できる比較的安価な屈折検査機器が登場。3歳児健診に導入した自治体で、治療を必要とする子どもの発見率が上がったとの報告が相次いだ。
 松江市では導入前後で発見率が0・6%から3・6%に、群馬県では0・1%から2・3%に、静岡市では0・3%から2・3%にそれぞれ上昇したという。日本眼科医会は検査マニュアルを作成し、全ての自治体に送付。
 昨年度からは購入に対する国庫補助が始まり、導入する自治体は7割を超えた。
 佐藤さんは「屈折検査は視力を測るものではないので、視力検査との併用が必要。検査の結果、精密検査を勧められても受診しない事例がある。普段困っていないからと先延ばしにすると、小学校入学までに治療が終わらない可能性もある。ぜひ早めに受診してほしい」と話している。
目の屈折検査の様子。5~10秒程度で測定が終わり、異常かどうか自動的に判定される(日本眼科医会提供)