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経済対策で党首対決 泉氏「給付」、首相持論展開


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相と立憲民主党の泉健太代表が衆院代表質問で対決した。与野党の1勝1敗に終わった衆参統一補欠選挙後、党首同士による初の本格論戦。所信表明演説で「経済」を連呼した首相に対し、泉氏は党の緊急経済対策に盛り込んだインフレ手当の「給付」をアピールし、実現を迫った。首相は答弁で特に踏み込まず持論を展開した。

逆手

 「国民が望むのは、今年中のインフレ手当の給付、給付、給付。これを実行すべきだ」

 24日、衆院本会議場の演壇に立った泉氏。所信表明で「経済、経済、経済」と首相が三唱したのを逆手に取る格好で、中間層を含む全世帯の6割を対象に3万円のインフレ手当を給付する立民の経済対策を紹介。内閣のひな壇に座る首相に時折目をやりながら、首相が与党に検討を指示した所得税減税にも触れ「減税の言葉をもてあそんでいる」と切り捨てた。

 畳みかけるようにガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除に言及。先の補選が行われた徳島、高知、長崎でもガソリン値上げに苦しむ生活者の声が多く届いたとし「ガソリン減税」と3回繰り返した。

成功体験

 泉氏が補選を持ち出し党の対策を訴えたのは、保守地盤の参院徳島・高知選挙区で大勝し、衆院長崎4区では自民党を焦らせた選挙結果によるところが大きい。

 街頭に立つことが少なかった首相や自民幹部とは対照的に、泉氏は告示後、計4回応援に入り浸透に努めた。立民関係者は「地方に寄り添う政策を前面に出せば、有権者に響くという成功体験を得たようだ」とみる。

 泉氏は代表質問で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題にも矛先を向け「教団の財産保全を行う議員立法を超党派で成立させるべきだ」と求めた。

 首相は、11月2日の閣議決定を目指す経済対策に関し「国民への還元については、所得税減税を含め早急に検討を進める」と主張。教団問題を巡っては「議員立法の法案を含め、各党のさまざまな動きを注視していく」と述べた程度で、やりとりはさほど盛り上がらなかった。

 代表質問を終えた泉氏は「検討や注視という言葉は出てきたが、結局、首相は何も答えなかった」と記者団に不満をぶちまけた。

危機感

 世論の関心の高いテーマを取り上げ、所信表明の言葉遣いを意識しながら首相を追及した姿勢は次期衆院選をにらんだ危機感の裏返しでもある。

 泉氏は衆院選で150議席獲得を掲げる。過半数233に遠く及ばない上、現在の擁立状況は160人程度にとどまる。

 共同通信の今月の世論調査で、立民の支持率は6・5%。日本維新の会(13・2%)の後塵(こうじん)を拝する。選対筋は「党勢低迷により、289小選挙区での擁立作業はなかなか進まない」とこぼす。

 泉氏は23日に共産党の志位和夫委員長と会談し、衆院選に向け連携する方針で合意したものの、維新や国民民主党など他の野党も巻き込んだ共闘構築は見えない。

(共同通信)