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バーナテッド ママは行方不明 シネマパレット・公開中 「母親像」行きつく先


バーナテッド ママは行方不明 シネマパレット・公開中 「母親像」行きつく先
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 山口の金子みすゞ記念館を訪れて久しぶりにあの詩に出会いうれしくなる。「みんなちがって、みんないい」で終わる「私と小鳥と鈴と」である。
 劇中のバーナテッドは将来を嘱望された建築家だったが、あることが原因で仕事をやめ専業主婦に収まった。頼りがいのある夫と賢い娘に囲まれて幸せのはずが、娘が家族で南極旅行がしたいと言い出したあたりから、ふさぎの虫が大きく騒ぎ出す。
 ママ友とうまく交われないし、人混みは大嫌いだし、こだわりの強いバーナテッドには世間は生きにくい。母親や妻をやめたいわけではない。夫を愛しているし、子どもはかわいい。それでもえたいのしれない不安に胸をふさがれる時がママにもあるもの。
 世間の描く、または望む「母親像」と格闘して果たしてどこへ行きつくのか。人とちがうことはギフトでもあるのだとしみじみ思いながら元気をもらう。監督はリチャード・リンクレイター。
 (スターシアターズ・榮慶子)