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障がい者配慮 企業手探り 来春義務化、炎上懸念も 共生社会へ「対話重ねて」


障がい者配慮 企業手探り 来春義務化、炎上懸念も 共生社会へ「対話重ねて」 合理的配慮のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 車いすを補助するスロープ設置や筆談による対応など、障害者に対する「合理的配慮」が来年4月から民間事業者に義務付けられる。主体的な取り組みが求められる企業などは手探り状態で、対応を誤れば“炎上”しかねないと懸念する。識者は、共生社会の実現に向けた契機とするため「障害者との対話を積み重ねることが鍵だ」と語る。
 「インターネット上で『差別だ』と非難されないか」。障害理解のためのeラーニング事業を展開する「リーンオンミー」(大阪府高槻市)が8月に大阪市内で開いたイベントで、参加企業から不安の声が出た。
 リーンオンミーは知的障害者や精神障害者らへの接し方のオンライン教材を無料で提供し「はっきり、短く、具体的に伝える」「保護者ばかりに話しかけるのは避ける」と紹介している。メーカーや小売業などで利用が進む。志村駿介代表取締役は「義務化自体や準備の仕方を知らない企業が多い」と説明する。
 「合理的配慮」とは障害者から生活上の困りごとや障壁を取り除く対応を求められた際、過重な負担にならない範囲で配慮すること。
 障害者差別解消法は(1)障害者が希望する配慮の内容を伝える(2)企業が過重な負担にならない範囲で対応する―と手続きを定める。「特別扱いできない」「前例がない」などと拒むことは認められないが、具体的な配慮策は課していない。「過重な負担」の範囲も、障害の程度や企業規模などケースごとに異なるため、企業が対応に戸惑う要因となっている。
 例えば、視覚障害者がスーパーの店員に買い物の付き添いを頼むケース。店側が混雑時に人手が足りていないことを理由に、すぐに対応することが難しくても「後でなら希望商品を準備できる」と提案するなど、拒否ではなく「建設的対話」によって合意点を探ることが求められる。
 ニッセイ基礎研究所の三原岳上席研究員は「障害者配慮に対する日本企業の意識はまだ低く、柔軟な対応にも慣れていない」と指摘。対話の決裂による炎上や、訴訟など民事紛争への発展を防ぐため「NPO法人などがコーディネーター役を務め、やりとりを調整する仕組みが有効だろう。話し合いを積み重ねて社会全体で好事例を増やせば、障害者を取り巻く環境を改善できる」と語る。
 障害者団体「DPI日本会議」(東京)の佐藤聡事務局長は「配慮を依頼した障害者が単なるクレーマーとして扱われるケースもある。対話だけで解決されない場合は企業に改善を促すなど国や自治体には積極的な役割を担ってほしい」と話した。
 内閣府は、障害者差別の解消に向けた相談に応じる「つなぐ窓口」を16日に開設した。「合理的配慮」が来年4月、民間事業者に義務付けられるのを控え、円滑な施行を後押しする。障害のある人や企業から相談を受け付け、関係省庁や自治体に取り次ぐ。「障害者から求められた配慮にどのように対応していいのか」などを受け付ける。
 つなぐ窓口、電話(0120)262701。祝日と年末年始を除き、午前10時から午後5時まで。メールアドレスはinfo@mail.sabekai―tsunagu.go.jp