有料

希望かなえる体制を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

解説
 脳死判定数が増え千例に到達したことは、心停止とは異なる死に関し、国民の受け入れが進んだことを示している。近年は、誰かのためになる最期の迎え方として選択する人もいる。ただ本人が提供意思を示していたり、家族が希望したりしていても、脳死判定し臓器提供できる体制の整った医療機関が限られているのが現状だ。
 厚生労働省などによると今年3月末の時点で、高度な医療を提供できる大学病院などの医療機関は全国に895施設ある。だが、うち約半数は、経験のあるスタッフや設備が不足しているなどの理由から脳死提供ができない。2019~23年3月に脳死提供をしたのは約180施設しかなかった。
 厚労省は脳死提供の経験が豊富な医療機関を拠点病院とし、近隣施設を支援する仕組みを作った。だが拠点数は現時点で17施設と限られ地域差がある。秋田、鳥取、山口、佐賀、大分では、脳死提供数の累計がいまだに5件を下回る。
 移植を待つ人は約1万6千人に上る。提供を希望する意思を最大限かなえ、命のバトンをつなぐためにも、医療機関の体制整備に向けた、さらなる取り組みが求められている。