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19/鈴木信行/知り合いも趣味も増え


19/鈴木信行/知り合いも趣味も増え イラスト 鈴木勇介 
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「入院中は日課として病院の敷地内を1万歩歩くことにしてるんです」。がんで入院しているマラソン好きの友人が交流サイト(SNS)にそう書いていました。病気や治療はつらい。でも、それに負けないくらいの楽しみや喜びを見いだしたい。そんな気持ちがひしひしと伝わってきます。
 私は入院中、暇があれば病棟のロビーにいて、ほかの患者とおしゃべりしていました。最初は声をかけにくいかもしれませんが、誰もが話すことに飢えているものです。
 天気でも病気のことでもいい、ちょっと勇気を出して声をかけてみると、きっと会話が始まると思います。話を切り上げたくなったら、例えば「そういえば3時には部屋に戻るよう言われていたので、続きはまた聞かせてください」などと言えば角が立ちません。
 私は退院後、そうして出会った方と一緒に、同室だった方が経営するレストランに行ったりバーベキューをしたりとお付き合いを続けています。
 抗がん剤による治療は苦しかったけれど、入院生活は楽しかった。知り合いが増え、知らなかった世界の話をたくさんうかがいました。
 趣味も増えました。長編小説を読み、見たかった映画をパソコンで見まくりました。旅行雑誌もいいですね。私は退院したその足で旅行に出かけました。通信講座で将棋の段を取り、全くうまくならなかったけれど英会話にも挑戦しました。
 そんなふうに趣味を楽しんだり興味のあることに取り組んだりしていると、看護師が興味を持つかもしれません。そのときは、退院後に何をしたいのか、どんな生活を送りたいのかを簡潔に伝えてほしいのです。それは看護師たちがあなたの退院後の生活を見据えて治療計画を作る際に、大切な情報源となります。
 入院することになったら、長時間をいかに楽しく過ごすかという発想で持参する物を選ぶといいと思います。私のお勧めは名刺。会社ではなく、プライベートの名刺です。多くの知り合いができるチャンスですから。
 今の私は年に数回通院し、帰りにはおしゃれなカフェか温泉に立ち寄ることにしています。最近では主治医が帰りはどこに行くのか聞いてくるようになりました。お勧めの場所をこちらから聞いて、盛り上がる。診察室も楽しいんですよね。
 通院や入院は時間がかかります。でも見方を変えると、そこには自分のために使える時間がある。通院や入院をいかにして楽しむかという発想があっていいと思います。ぜひ自分なりの楽しい時間をお過ごしください。
  (患医ねっと代表)
 (次回は11月1日掲載)