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支持率低迷、政権綱渡り/岸田首相 衆院解散模索/物価高、外交に漂う不透明感


支持率低迷、政権綱渡り/岸田首相 衆院解散模索/物価高、外交に漂う不透明感 参院本会議で所信表明演説をする岸田首相=23日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 衆院議員4年の任期が30日に折り返しを迎える。2021年衆院選、22年参院選を与党勝利で乗り切った岸田文雄首相。25年まで重要政策に専念できる「黄金の3年間」を得たとみられたが、物価高が直撃し内閣支持率は低迷。政権運営は一転、綱渡りの状態だ。来年は台湾総統選や米大統領選が控え、外交に不透明感が漂う。自身にとって最善な衆院解散時期はいつか。模索が続く。

皮算用

 「3年程度の変革期間を視野に入れて集中的に講じる」
 23日、衆院本会議。首相は所信表明演説で、成長型経済への転換に注力すると訴えた。政権が掲げる「異次元の少子化対策」でも「3年」を集中期間と位置付け、キーワードとなっている。
 3年にどのような意味があるのか。首相周辺は「来年の総裁選で再選するぞ、というメッセージだ」と説く。再選すれば総裁任期は3年延びる。優先課題で成果を上げ、レガシー(遺産)を残せるというわけだ。
 ただ再選の道を固めるには「今の低い内閣支持率では心もとない」(官邸筋)のが本音。年内の衆院解散は困難な情勢だ。賃上げを実現して来年6月に所得税減税を実施し、所得向上を実感してもらって政権浮揚を図る―。そんな青写真を描く自民ベテランは「来年なら解散の機運が再び膨らむ」と皮算用する。

不確定要素

 外交も政権運営を左右する。今年は3月にウクライナを電撃訪問。5月には先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を議長として成功裏に運び、一時的に追い風を得た。だが来年は不確定要素が多い。
 まずは1月の台湾総統選。「一つの中国」を認めない与党、民主進歩党(民進党)の頼清徳副総統に、対中融和路線の最大野党、国民党の侯友宜新北市長が挑む。国民党勝利なら、中国が「統一」への動きを一段と強めて東アジア情勢が不安定化する恐れがある。
 11月の米大統領選も気がかりだ。外交筋は「同盟関係より米国の実利を優先しかねないトランプ前大統領が当選すれば、日本にとって安全保障上のリスクになる」と語る。貿易交渉で対日圧力をかけた記憶も新しく「良好な関係を築けなければ、岸田首相には任せられないとの声が上がるかもしれない」と案じた。

つなぎ留め

 「憲法改正は先送りできない課題だ。総裁任期中に改憲を実現したいとの思いは、いささかも変わらない」。首相は26日の参院代表質問で、重ねて意欲を示した。
 自民内では、タカ派の代表格だった安倍晋三元首相に比べ、ハト派イメージの岸田首相は改憲に消極的だとの見方が根強い。LGBTなど性的少数者への理解増進法施行により保守層の支持離れが指摘される中、発信を強めてつなぎ留めようとの思惑がにじむ。
 衆院任期満了まで残り2年。内政、外交に腐心しながら、保守層への目配りも欠かせない。解散戦略を練る首相は今月発売の月刊誌「Hanada」のインタビューで力を込めた。「やるべきことをやって成果を積み重ねた結果によって、その先に行ける」