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80歳、好きを生きがいに 仕事貫く強い意志 デザイナー鳥居ユキさんが新著


80歳、好きを生きがいに 仕事貫く強い意志 デザイナー鳥居ユキさんが新著 「80歳、ハッピーに生きる80の言葉」
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 デザイナーの鳥居ユキさんが新著「80歳、ハッピーに生きる80の言葉」(主婦と生活社)を出版した。19歳でデビュー以来、欠かさずコレクションを発表し続ける仕事の流儀から日々の暮らしまで、多岐にわたる話題を収めた。「年齢は気にしなくていいけれど自覚はしなさいと母は言っていました。80歳? なんか来ちゃったわという感じで自分でもびっくりしています」
 起床は朝の5時15分。まず窓を開けて新鮮な空気を取り入れて深呼吸する。庭で植木の様子を確認してからストレッチと筋力トレーニング、入浴。体重と血圧をはかって朝食を取る。そして新聞を読みながら出勤する。
 規則正しい生活と仕事は不可分一体。暮らしの中から多くの発想を得てきた。自称「超せっかち」。スピードや鮮度、勢いを大切にしながら、時代のにおいを鋭敏に感じ取る。そんな驚異的な仕事ぶりを貫くのは「何でも出来(でか)す!」という強い意志だ。「『できる』というよりも語感が強いでしょう? 『無理』という言葉が嫌いなの。諦めないし、しつこいのね」
 花柄は「ブランドのアイデンティティー」だ。季節の花々と幸福な関係を築いてきた。手塩にかけた末に美しく開く花は「子どもと同じで育てるのは大変」。日々の癒やし、服作りへのインスピレーションをもたらしてくれる大切な存在だ。
 新著では、幼い頃に歌舞伎やオペラなどの芸術に親しむきっかけを与えてくれた祖母ミツさん、「世界中の美しいものをすべて見てきなさい」と欧州への遊学に送り出してくれた母君子さん、公私ともに「良き伴侶」だった夫高雄さんの逸話も披露した。
 中学を卒業した鳥居さんは、君子さんの勧めで、高校ではなく飛び級で文化学院に入学した。当時の院長は歌人の与謝野晶子らと学院を創設した西村伊作。3歳年長の同級生たちとなじめず、院長室で過ごすことが多かったという。「想像とは悩むことではなく考え抜くこと」「自由は責任を伴う。はき違えてはいけないよ」といった西村の言葉を、今も大切に抱き続ける。
 ファッションは自分を好きでいられるためのもの、と考える。「大切なのは、自分の好きなものを自由に着て楽しむこと」と説く。そして服に限らず「好きなもの、楽しいものを積極的に見つければ、やがて生きがい、生きる力になります」。
 心を柔らかく保って新しいものも受け入れる。身の回りにある小さな「ハッピー」を見つける…。鳥居さんがお手本を示す健やかな暮らしは、読者にも生きる喜びをもたらしてくれる。