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米、AI管理へ大統領令 開発情報の提供義務化


米、AI管理へ大統領令 開発情報の提供義務化 人工知能(AI)に関する米大統領令のポイント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【ワシントン共同=井口雄一郎】バイデン米大統領は30日、人工知能(AI)のリスクを管理するための大統領令を出した。国家や経済の安全保障への影響が懸念される高度なAI技術の開発企業に、安全試験の結果などの情報を政府に提供するよう義務付けることが柱。偽情報の拡散対策で政府公式コンテンツを認証する仕組みも導入、医療や教育での活用促進策も盛り込んだ。開発と利用を管理する国際枠組みの確立へ日本やインドなどとも連携する。 (4、7面に関連)
 ホワイトハウスは「AIの将来性とリスク管理で米国が世界をリードする」と強調した。米国にはマイクロソフトやグーグルをはじめとした世界的なAI企業や有力な研究機関が集中しており国際的なモデルとなる可能性がある。連携相手に開発を急速に進める中国は含めなかった。米政府は11月1~2日に英国が開くAI安全サミットにハリス副大統領を派遣する。
 大統領令は「AIを安全で信頼できるものにする」と明記した。安全試験の結果について、戦時など重要局面で民間企業を統制する権限を大統領に与えた国防生産法に基づき、AI技術の公開前に提出するよう企業に要求した。従わなければ政府が訴訟を起こすことができる。試験の基準は国立標準技術研究所(NIST)が作成する。
 商務省は、生成AIによる動画や音声を識別可能にする「電子透かし」の技術や、コンテンツの認証に関する手引を作る。他国にも参考になる内容とし、国際的な基準作りを主導する考えだ。
 医療や新薬開発でのAI利用を促すため、補助金を拡充。同時に、責任ある活用のために健康被害の報告を集める仕組みを厚生省に作る。教育分野では、個々の生徒に合わせた授業提供システムの開発を支援する。
 犯罪捜査や裁判の公正を保つことを目的に、監視や仮釈放の手続きにAIを使う事例集も作成。有能な技術者を国外から獲得するため、査証(ビザ)の取得や移民手続きの刷新も図るとした。
 優先度の高い対策は90日以内に実行する。個人データ保護のための法律制定を議会に求めた。