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続く不祥事、首相窮地 自民ベテラン「秘密主義影響」 柿沢副法相辞任 柿沢隠し 身体検査 積年のうみ


続く不祥事、首相窮地 自民ベテラン「秘密主義影響」 柿沢副法相辞任 柿沢隠し 身体検査 積年のうみ 岸田内閣の主な辞任例
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 9月の内閣改造後、また政務三役が辞任した。不適切な女性関係が報じられた山田太郎前文部科学政務官に続き、法務副大臣として法秩序の維持を担う柿沢未途氏に公選法違反に加担した疑惑が浮上。政権内では「政治とカネ」問題への警戒感も強まり、閣僚4人の辞任ドミノが起きた昨年の「悪夢」(自民党幹部)がよみがえる。支持率低迷の中、さらに窮地に陥る岸田文雄首相。野党は攻勢を強めた。 (1面に関連)
 「なぜ昼の休憩時間に辞めさせるのか。これは『柿沢隠し』だ」
 31日午後、参院第1委員会室。予算委で、柿沢氏本人をただそうと手ぐすね引いていた立憲民主党の杉尾秀哉氏は首相に怒りをぶつけた。官邸は予算委の昼の休憩時間に持ち回り閣議で柿沢氏の辞表を受理。杉尾氏の追及により、傷が広がるのを防ぐ手を打った。
 官邸と自民党本部は、東京地検特捜部に公選法違反の疑いで強制捜査された東京都江東区の木村弥生区長を巡る事件が、柿沢氏に飛び火しないか危惧していた。事前の聞き取りでは「問題なし」(自民重鎮)。しかし柿沢氏が報告していない内容が一部で報じられると、一転して「辞任は不可避」に傾いた。
 官邸筋によると、31日朝、官邸サイドが柿沢氏に「辞めるなら早めに、自発的にしてほしい」と伝達。小泉龍司法相が柿沢氏に事実確認し、午前9時半ごろ辞表が提出された。首相周辺は「所得税減税を進めようとしているところにとんだ冷や水だ」と眉をひそめる。
 「弱り目にたたり目。政務三役起用に当たり、スキャンダルの有無を確認する『身体検査』が十分に機能していない」。自民幹部はため息をついた。柿沢氏の疑惑は、内閣改造前から党内でささやかれていた。26日に文科政務官を辞めた山田氏の女性問題を含め、選考過程でしっかり見抜けぬまま、首相は「適材適所」と言い切った。
 相次ぐ不祥事の発覚に、自民ベテランは「首相の秘密主義が影響している」と踏む。人事を周囲にほとんど漏らさず、決定直前になって身体検査を始めるため「派閥任せになり資質を見極める時間がない」(閣僚経験者)というわけだ。
 国会論戦では、加藤鮎子こども政策担当相が実母への事務所賃料支払いを認め、やり玉に挙げられた。武見敬三厚生労働相が閣僚就任後に開いた政治資金パーティーも問題視される。自民中堅は「政務官、副大臣ときて閣僚辞任となれば政権はもたない」と危ぶむ。
 野党は、2週連続の辞任劇をてこに政権批判を強める。
 岸田政権では昨年10月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点を巡り、曖昧な説明に終始した山際大志郎元経済再生担当相が辞めたのを皮切りに年末までに4閣僚が辞任。支持率低迷の「暗いトンネル」(自民関係者)が長く続いた。
 立民の安住淳国対委員長は「続けざまに不祥事が出て辞任、辞任というのは昨年をほうふつさせる」と皮肉る。共産党の穀田恵二国対委員長は「単なる不祥事ではなく、自民党の積年のうみが岸田政権に噴き出ている」と意気盛んだ。
 対する首相。予算委では力なく陳謝した。「国民の信頼を回復できるよう、内閣として与えられた課題に全力で取り組みたい」