有料

安定して成長する道筋を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が決定した経済対策は、家計支援の減税や企業の投資促進策などを幅広く盛り込んで大型化した。新型コロナウイルス禍と物価高への対応で膨張した財政支出を平時に戻す手じまいは遠い。
 内閣府によると、日本経済全体の需要不足は4~6月期に3年9カ月ぶりに解消した。コロナ禍からの景気回復を裏付け、財政再建を悲願とする財務省の幹部は「需要喚起の財政出動は不要」と、大規模な対策を求める与党幹部をけん制した。
 しかし岸田文雄首相自らが唐突に所得税と住民税の減税、低所得世帯への給付を追加し、対策の規模は17兆円台前半に膨らんだ。減税と給付は仕組みが複雑で即効性に欠けるとの批判がある。対策を裏付ける2023年度補正予算案には、借金である国債の増発が明記される公算が大きい。
 物価高が重くのしかかる家計への支援は急務だが、借金に依存する財政状況の中で、ガソリン代と電気・都市ガス料金を抑制する補助金や減税をいつまでも続けるわけにはいかない。物価高を上回る賃上げを実現し、国の財政支出に頼らずに経済が安定して成長する道筋を付けるのが政府の役割だ。