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杉田氏発言は「扇動」「二次加害」   


杉田氏発言は「扇動」「二次加害」    ユーチューブへの投稿動画で「差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と語る杉田水脈衆院議員とコメント欄(画像の一部を加工しています)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 アイヌ民族や在日コリアンに関する差別投稿が問題となった自民党の杉田水脈衆院議員が、新たに投稿したユーチューブ動画で差別の意図を否定しつつ「差別がなくなっては困る人と闘ってきた」と持論を展開しており、専門家は「差別の扇動」「二次加害だ」と非難を強める。

正当化
 杉田氏は「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」などとした過去の投稿が札幌、大阪両法務局から人権侵犯と認定され「啓発」を受けた。その後、10月27日付で投稿した動画では「アイヌや在日(コリアン)の方々に対する差別はあってはならない」とした上で「逆差別、えせ、それに伴う利権。差別を利用して日本をおとしめる人たちがいる」と語った。11月1日にはX(旧ツイッター)で人権侵犯認定制度に疑義を呈した。
 杉田氏の動画での主張に、情報社会の偏見や差別に詳しい東洋大の高史明准教授(社会心理学)は「典型的な現代的レイシズムだ」と指摘する。
 現代的レイシズムは主に米国の黒人への偏見で研究されてきた。「劣った人種だ」といった露骨な差別表現が許されなくなった状況で、ネガティブな感情を正当化するため「差別はないのに騒ぎ立て、不当な要求で特権を得ている」と主張することなどを指す。

月並み
 高准教授はこうした偏見が特定の人種だけでなく、女性や性的少数者にも向けられてきたとして「マイナスをゼロに近づけるための施策は優遇ではない。杉田氏の発言はマイノリティーのアイデンティティーを否定し、差別を扇動している」と断じた。
 動画は4日時点で5万回以上再生され、コメント欄には「真実を教えていただいた」「応援しています」などと称賛する意見があふれているが、高准教授は「杉田氏の振る舞いは特別ではなく、世界中で観察されてきた月並みなレイシズムだと知ることが、幻想を捨て距離を置くことにつながるのでは」と語る。

意図
 「開き直って二次加害を繰り返している」と一連の言動を非難するのは認定NPO法人「Dialogue for People」副代表のフォトジャーナリスト安田菜津紀さん。父親は在日コリアンだ。「ルーツを否定され、自分が社会に存在してはいけないと思わされるような言葉の暴力」にさらされ、差別をなくすための行動を起こすと「被害者ビジネス」とやゆされたという。
 杉田氏の動画発言にも同様の意図が見えるとして「不平等を是正するために社会が考えるべき課題を、被害者に責任を押し付けて黙らせようとしている。差別を温存、放置するものだ」と強調した。