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男女格差是正、「腹落ち」不可欠/中高年男性向け研修活況/対話重ね課題認識


男女格差是正、「腹落ち」不可欠/中高年男性向け研修活況/対話重ね課題認識 「高度経済成長を支えた人々の価値観を否定したり、個人を批判したりするのではなく、未来に目を向けてもらえるよう語りかけるのが大切です」と話す萩原なつ子さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 企業や地域の「女性活躍推進」が叫ばれる中、意思決定を担うことが多い中高年男性を対象とした研修が活況だ。キーワードは「腹落ち」。専門家は「見せかけではない女性活躍を実現するには、ジェンダーギャップ(男女格差)に対するトップ層の『腹落ち』が不可欠」と語る。
 「女性活躍のメリットは何か。成功事例や、定量的成果を示せた方が経営陣を納得させやすい」「『活躍』とは昇進を指すのか。言葉の整理が必要では」「(男性中心の人間関係や暗黙の企業文化などを指す)『オールド・ボーイズ・ネットワーク』と呼ばれることにモヤモヤする」…。
 9月下旬、企業のダイバーシティー(多様性)推進を支援するNPO法人J―Win(東京都)が開催した「男性ネットワーク」の定例会。メーカーや通信など、さまざまな企業で部長や課長を務める男性約70人が、業務の合間をぬってオンライン上で顔を突き合わせ、意見を交わした。
 2017年度に始まった同ネットワーク。メンバーは1年かけて対面やオンラインで他社メンバーと研修を重ね、自社の女性活躍施策につなげる。近年は製造業を中心に参加が急増し、7期目の本年度は首都圏以外の企業が3割を占めるなど関心が高まっているという。経営陣を対象とした研修も人気だ。
 研修で重視されるのがメンバーの主体性と「腹落ち」。J―Winの河野豊さんによると、企業の女性活躍が進まない背景には「男性は仕事、女性は家庭」といった思い込みのほか、女性は上役とのコミュニケーションの機会が男性に比べて少ないことから、情報や経験の格差が生まれやすいという実情がある。「自ら課題を洗い出し他社と情報交換することで、自分や自社に根付いた格差に気づき、是正の必要性を納得することができるようです」(河野さん)
 女性活躍推進は、時に「男性差別」と受け止められたり、うわべだけの「数合わせ」に陥ったりするリスクをはらむ繊細なテーマだ。誰もが自由に発言できる「心理的安全性」を確保した上で、対話による「腹落ち」を目指す手法は、「企業だけでなく地域の男女格差解消にも有効」と、国立女性教育会館の萩原なつ子理事長は指摘する。
 萩原さんがアドバイザーを務める兵庫県豊岡市では22年、全員が男性の自治会長や、女性役員ら100人以上を集めたワークショップを開催。祭りで固定化されてきた男女の役割分担などを一緒に考える機会を設けた。
 「無意識に特権性を与えられてきた年配の男性に、内面化された男女格差を認識してもらうには地道な対話が必要。けれどいったん『腹落ち』してもらえれば、改革は早いことが多いです」