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異常知らせる「心雑音」/専門家「年に1度は聴診を」


異常知らせる「心雑音」/専門家「年に1度は聴診を」 心臓弁膜症の啓発セミナーで、参加者に聴診器の使い方を指導する奈良県立医大循環器内科の尾上健児講師=8月6日、東京・日本橋
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 65歳過ぎに急に増える心臓弁膜症をはじめ、さまざまな心疾患を教えてくれる「心音」。日本循環器協会幹事の尾上健児奈良県立医大講師(循環器内科)は「年に1度は聴診をしてもらい、心雑音があれば心臓の超音波検査を」と訴える。
 心臓には血液を受け入れる左右の心房と、血液を送り出す左右の心室の計4部屋があり、それぞれの出口に逆流防止弁がある。正常な心音の正体はこの弁が閉まる音。心室がキュッと縮んで血液を送り出す「収縮期」と、血液を吸い込むため広がる「拡張期」を繰り返す心臓。「ドックン」という心音の前半が、収縮期に左右の心房の僧帽弁と三尖(さんせん)弁が閉まる音。後半が拡張期に心室の大動脈弁と肺動脈弁が閉まる音だ。
 これらの弁は加齢や動脈硬化などでうまく開かない狭窄(きょうさく)症や閉じない閉鎖不全症を起こす。これが弁膜症で、隙間から漏れ出す高速の血流で雑音が生じ、心音がきれいに聞こえなくなる。ただ、30分ほどの超音波検査でどんな不具合があるか簡単に分かるという。重症なら人工弁で治療でき、体力がない高齢者でも、カテーテル治療で弁を交換できる時代になった。
 心臓弁膜症を放置すると狭心症や失神、心不全に至る。尾上さんは「1960年代にはこれらの症状が出たら余命数年と言われた。今は人工弁に交換すれば寿命を全うすることも期待できる」と、心雑音が教えてくれる警告を聞き逃さないよう訴えている。

心臓弁膜症の啓発セミナーで、参加者に聴診器の使い方を指導する奈良県立医大循環器内科の尾上健児講師=8月6日、東京・日本橋