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治療支えるホテル開業1年/千葉・三井ガーデン柏の葉/疾患別プラン、食事対応も


治療支えるホテル開業1年/千葉・三井ガーデン柏の葉/疾患別プラン、食事対応も 大腸がん手術患者の宿泊プラン開発に当たった国立がん研究センター東病院の千歳はるか栄養管理室長(左)と近藤美紀副看護部長
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 千葉県柏市の国立がん研究センター東病院の敷地内に昨年夏、病院と連携した「三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド」(145室)が開業して1年。日本ではまだ珍しい「治療を支えるホテル」の手応えを関係者に聞いた。

リピーター続々

 「現在、宿泊客の約3割が患者さんやご家族です」と斉藤学総支配人。新型コロナウイルス禍での開業とあって、海外からの患者利用が伸びない誤算はあったが、宿泊客のリピート率は5割に近く、グループでも群を抜く。コロナの落ち着きで、利用も増えてきた。
 患者に特に好評なのが24時間対応のケアスタッフ。看護師や介護福祉士の資格を持つスタッフが常駐し、患者を見守り、病院への橋渡しをする。体調不良時の緊急対応に備えるが、家族や病院にも言えない悩みを聞くことも多いという。
 客室常備や貸し出しの備品も20種類を超える。血圧計や体重計はもとより、医療用ウィッグのスタンドやペットボトルオープナー、体勢を支えるビーズクッションなど、患者の要望で備えた独特のラインアップが並ぶ。「今後も要望に応じ品数やサービスを充実させたい」と斉藤さん。

自宅との中間

 病院側で開業前から準備に当たった近藤美紀副看護部長は「病院と自宅の中間という特徴を生かし、患者さんやご家族の気持ちを癒やす空間になった」と笑顔を見せる。
 遠来の患者の利用を想定したが、地元の利用も多く「病院に近い安心感が大きいのでは」と近藤さん。この夏、大腸手術後の患者向け宿泊プランと放射線治療患者向け連泊プランを始めた。
 大腸の手術後しばらくは腸閉塞(へいそく)の危険があり、食材や調理法、量に注意が必要。がんも最近は退院が早くなったが、家での対応も難しい。東病院の千歳はるか栄養管理室長は「消化吸収の良い食事を用意した」と話す。
 病院食は患者しか食べられないが、ホテルなら家族も一緒に食べられ「こういう調理法なら大丈夫」と実践的な栄養指導にもなる。千歳さんはこうした利点を挙げる。

患者第一で

 「シェフには無理を言って、細かい対応をしてもらった」と近藤さん。特にこだわったのは朝食のビュッフェ。消化に良い約20種類の小鉢料理が並ぶ。嚥下(えんげ)障害が出たり、量を食べられなかったりする患者も、食べられる料理や量を選べることが大切だからだ。食事を残すと落ち込み、逆に食べ切れれば「自分は元気」と思える。「食べられたことの安心感は治療にも大きく影響する」と千歳さん。
 昼夜はコース料理だが、患者はメインを肉、魚、麺類の3種類から選べ、量も軽め。食材が2センチ角の「一口大食」、5ミリ角の「刻み食」、スプーンで崩れる「軟菜食」も用意できる。ホテル内のレストラン「丁字屋柏の葉」の田原誠シェフは「症状に合わせて極力対応する。普段もアレルギーや苦手な食材を伺っているので、特に大変とは思わない」と語る。
 米国でも病院とホテルがここまで連携する例はないというが、近藤さんは「ホテルが患者さんに良い場所になることが一番。そうでないと病院の敷地内に作る意味はない」と力を込めている。

三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド=千葉県柏市

大腸がん手術患者の宿泊プラン開発に当たった国立がん研究センター東病院の千歳はるか栄養管理室長(左)と近藤美紀副看護部長