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<表層深層>戦闘「休止」ぎりぎりの一致/ガザ情勢、打開へ難路/G7外相声明  


<表層深層>戦闘「休止」ぎりぎりの一致/ガザ情勢、打開へ難路/G7外相声明   ガザ情勢を巡る日米英仏の立場
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 先進7カ国(G7)は、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘を巡り、外相声明発表にこぎ着けた。戦闘開始から1カ月がたち国際社会の世論は変化。G7各国の立場にも違いが露呈する中、総意として何を発信できるか―。一致点をぎりぎりまで探り、パレスチナ自治区ガザでの戦闘の「人道的休止」支持を確認した。だがイスラエルが休止に応じるかどうかは分からない。アラブ諸国や国連の思惑も交錯し事態打開へ難路が続く。 (1面に関連)

 「昨日は予定時間を大幅に超え、2時間以上にわたり突っ込んだ議論ができた。時には激しく、遠慮のないやりとりだった」。8日、東京都内でのG7外相会合終了後、議長として記者会見した上川陽子外相は、ガザ情勢に関する前日の協議を振り返った。
 国連安全保障理事会は、常任理事国の米国、ロシア、中国といった大国の駆け引きでガザ情勢に関する決議を採択できず、機能不全に陥る。
 G7各国も決して足並みはそろわない。
 イスラエル擁護の姿勢を堅持する米国は、10月27日の国連総会緊急特別会合で採択された「人道的休戦」を求める決議案に反対した。一方、フランスは賛成、日本や英国など5カ国は棄権し、対応は分かれた。
 こうした状況に、アラブ諸国からG7に対し「イスラエル寄り」との批判が噴出する。外交筋は「人道支援のため、戦闘を中断する人道的休止が必要だというG7のスタンスを明らかにする必要があった」と指摘する。

最大公約数
 声明の人道的休止の英語表記には、外交的工夫を施し「休止」をpausesと複数形にした。ガザ住民に対する支援機会などを何度かつくることに含みを持たせ、国際社会の理解獲得を目指したとみられる。
 ただ定義はない。具体的な場所や期間、方法への言及はなく「休戦」や「停戦」といった文言を使うことは避けた。自国民がハマスに拘束され人質になっている欧米諸国には、休戦や停戦が人質救出作戦の足かせになるとの懸念があるためだ。ハマスに態勢立て直しの時間を与えるとの危惧も根強い。
 バイデン米政権は停戦に反対する。民間人の犠牲をいとわないイスラエルの攻撃を抑えられず、内外で逆風にさらされる。英国では停戦を求めた与党議員が政府の役職から解任された。
 当初、イスラエル寄りだったフランスは人道的休戦を主張。日本は原油輸入の大半を中東地域に依存しており、イスラエル、アラブ双方とのバランスに腐心する。
 声明取りまとめに携わった日本政府関係者は、G7各国が対応に苦慮していると強調。「ハマスによるテロ攻撃を非難し、人道目的の戦闘休止を訴えることが最大公約数だった」と明かす。

模索
 しかしハマスを敵視し、強硬姿勢を貫くイスラエルが外相声明をどう受け止めるかは読めない。アラブ諸国には、より長期の休戦や停戦を求める声が多い。国連のグテレス事務総長は「人道的な即時停戦」を求める。
 上川氏は会見で「ガザの持続可能な長期的解決に取り組む」と意気込んだものの、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」という大目標に向けた議論が動き出す余地はあるのか―。
 日本外交筋は心情を吐露する。「イスラエルとハマスの戦闘に関し、パーフェクトな外交をできている国はない。みな模索しているんだ」
(東京、ニューヨーク共同)
G7外相会合で記念写真に納まる(左から)EUのボレル外交安全保障上級代表、クレバリー英外相、ドイツのベーアボック外相、ブリンケン米国務長官、上川外相、カナダのジョリー外相、フランスのコロナ外相、イタリアのタヤーニ外相=8日午後、東京都港区の飯倉公館