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“離島の所得、なぜ上位?” 沖縄の大学教授が分析すると「稼ぎは多いかもしれないが…」


“離島の所得、なぜ上位?” 沖縄の大学教授が分析すると「稼ぎは多いかもしれないが…」 南大東島(2014年撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 沖縄県が毎年公表する県市町村民所得で、市町村別の1人当たり所得の上位に毎回離島自治体が名を連ねるのはなぜか―。

 沖縄国際大の宮城和宏教授(経済学)はこのほど、2018年度の市町村民所得をさまざまな経済指標を用いて分析し、論文にまとめた。1人当たり所得に影響を及ぼしているのは、就業率と労働生産性だと導き出した。

 上位の離島自治体の産業構造は人口規模が小さいため農業や建設業など特定分野に特化している。人口規模が小さいため就業率が高い上、大型ハーベスターを用いた資本集約的なさとうきび農業や港湾や農地などの公共インフラ整備が多く実施されていることから労働生産性も高い。結果、1人当たり所得も高水準になるとした。

 1人当たり所得は、雇用者報酬のほか、財産所得や企業の利潤など市町村民や市町村内の企業などが得た所得の合計を人口で割って算出する。
 18年度の1人当たり所得は南大東村が432万円で県内トップ、次いで北大東村が427万円、与那国町が412万円、渡名喜村が384万円と続いた。

 就業率は県平均46・3%に対し南大東は64・2%、北大東は66%、与那国は55・6%、渡名喜は53%。労働生産性は県平均671万円に対し、南大東852万円、北大東904万円、与那国891万円、渡名喜808万円だった。

 一方、上位4離島自治体は高校がないため子どもは15歳で島から出ざるを得ない。また、病院や介護施設が十分にないことから、高齢者が生まれ島で最期を迎えることは難しい。子どもや祖父母の世話のために母親が本島に出て、父親のみ島で暮らす例もあり、独居世帯が多いことが特徴だ。こういった事情から人口減少につながり、就業率を上げている側面もある。

 宮城教授は「離島は稼ぎは多いかもしれないが、就学や通院で支出も多い。家族全員で過ごせる期間も少なく、幸福度の観点から課題も大きい」と語った。論文の概要は23年のおきぎん調査月報1月号に掲載されている。 

 (梅田正覚)